No title

自主練を終え、体育館の鍵を閉めていると校舎の裏手へ歩いていく宮地さんの姿が見えた。

あんなとこでなにやってんだろう。今日は部活が早く終わったからとっくの昔に帰ったとばかり思っていたのに。

気になって後をつけると、人気のない中庭で女子生徒が一人待っていた。

目がくりくりしていて、化粧もそんなにケバくもなく、いかにも清純って言葉が似合いそうな可愛い子だ。

恥ずかしそうに地面を見つめて、宮地さんの姿にドキドキしているのが遠くからでもわかる。

これは、もしかしなくても愛の告白タイムじゃないのか?

藪蛇だったと木の陰に身を潜めるのとほぼ同時、

「――ずっと好きだったの。付き合ってくれないかな?」

やっぱそう来たか〜! 

まさにテンプレどうりの展開に俺は思わず頭を抱えた。

覗いていたのがバレたら確実に絞められる!

でも、宮地さんがどんな返事をするのか聞いてみたい。

見つかったらマズイと思う恐怖心と、事の行方を見守りたい好奇心が綯交ぜになって、俺の足を地面に縫いつけてしまう。

幸い、宮地さんからは死角になって居る為、俺の存在には気付いていないようだ。

「気持ちは嬉しいけど。オレ、今はWCの事しか頭にないんだ。だからごめんな」

うっわ、宮地さん……それ、やんわり断るときの常套句って奴じゃね?

俺には散々エロい事しまくってんのにWCの事しか頭にないとか、よく言えたな。

宮地先輩の本性を知っている俺としては笑わずにはいられない。思わず吹き出してしまいそうになるのを必死に堪えながら息を潜めていると、女の子の表情がみるみるうちに泣き顔に変わってゆく。

「ごめんね、答えてくれてありがとう」と目にいっぱい涙を溜めながら無理な笑顔を作ってみせる彼女の姿に胸が痛んだ。

アイドル好きな宮地さんの好みそうな顔してたのに……。あの子の何がいけなかったんだ?

「――覗き見とは、いい趣味してるじゃん? 高尾」

「!!」

去って行った彼女に気を取られていた俺は、後ろから向けられた鋭い視線に気付くのが遅れ、羽交い絞めにあいヒッと息を詰めた。全身からさーっと血の気が引いていくのを感じる。


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