No title

「うわ〜……宮地さんなんすかそれ。すげーポッキーの山」
放課後、いつもより少し遅れてやってきた宮地は袋に入れられた沢山の箱を抱えてやってきた。
その半分以上がお菓子の箱で、ポッキーやプリッツといったスナック菓子がぎっしりと詰め込まれている。
「大変だな宮地も。毎年恒例になってるんじゃないか?」
「いい迷惑だっつ〜の。大体、こんなに食えるかよ」
はぁ、と軽く溜息を吐いてその袋を無造作にロッカーの隅へと置く宮地。
「宮地さんってそんなにポッキー好きだったんっすか?」
「は? んなわけねぇだろ! 馬鹿」
ギロリと睨み付けられて体が竦む。
「ははっ、今日は宮地の誕生日だからな。たまたまポッキーの日と被ってるから、毎年プレゼントに貰うらしい」
「たくっ、どいつもこいつもいい迷惑だっつーの」
大坪の言葉に盛大に溜息を吐いて、着々と着替えを進める宮地。
「へぇ、今日誕生日だったんっすか」
もっと早く知っていれば何かプレゼントでも用意したのに……。
「宮地さん」
「んだよ。言っとくけど、プレゼントくれるってんならみゆみゆの握手会チケットしか受け付けねぇぞ」
「ブフォッwww 流石宮地さんwww みゆみゆは無理っス。高尾ちゃんのチューで勘弁して下さいよ」
「……あー、じゃぁそれでいいわ」
「ふへっ!?」
冗談で言ったつもりだったのに、予想外の返事が返って来て思わず間の抜けた声が洩れた。
動揺して瞳を揺らす高尾の頬を、宮地の指先がいたずらに撫で下ろした。
艶めかしい仕草に一際大きく鼓動が跳ねる。茶色がかった双眸に至近距離で見つめられると緊張で息が出来なくなってしまう。
「お前が言い出したんだろう? ほら、どうした?」
「ッ!」
急かすように顎を持ち上げられするりと顔を寄せて来る。避けきれないと判断した高尾は堪らずぎゅっと目を瞑った。
宮地の行動に、周りで着替えていた大坪達も驚いて声が出ない。着替える手を止め、息を潜めて二人のやり取りを見つめている。
そんな部室内の様子を見て、宮地がククッと喉で笑った。
「冗談だよバーカ」
「!」
ぎゅむっと鼻を摘ままれ、驚いて目を開ける。
「すっげー間抜け面してっぞお前」
高尾の顔が余程可笑しかったのか、くっくっくと笑いながらくしゃりと頭を撫でられた。
「ちょっ! ひっでぇっなんっすか、それっ!」
キスを待っているみたいに目を閉じてしまった自分が恥ずかしいのと、はめられたようで腹が立つのとで、やり場のない思いが胸の中をぐるぐると渦巻き、体温が上がる。
「お前のその顔見れただけで十分だわ」
満足そうに笑ってヒラヒラと手を振りながら宮地が部室のドアを開ける。
(クソッ、無駄にイケメン過ぎてムカつくッ)
心の中で悪態を吐いたのとほぼ同時、宮地はドアを開ける手を途中で止めて、躊躇うように高尾を振り返った。
「どう、したんすか?」
ドアの取っ手に手を掛けたまま動きが止まった宮地に、高尾は首を傾げる。
「いや……お前の誕生日いつだよ? ……一応、聞いといてやる」
「21日っす。……今月の」
「へぇ、オレとあんま変わんねぇのな」
それだけ呟くと、宮地は今度こそ本当に部室を出て行ってしまった。
ドアの陰に隠れる一瞬、何かを企んでいるような表情をしていたような気がした。
「なんだったんだろうな? 今の質問……」
「俺が知るわけが無いのだよ」
「だよな」
もしかして、誕生日を祝ってくれたりするのだろうか?
(まっさかぁ。宮地さんに限って有り得ねぇだろ)
ふと過った考えを否定し、ロッカーの扉を閉める。
「何をしている。俺たちも早く行くのだよ」
「はいよ!」
宮地が何を考えているのかはわからないが、それは誕生日の楽しみにとっておくか。
緑間の後を追いながら、高尾はそんなことを考えていた。



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