No title

(伊月SIDE)
(伊月SIDE)
「ん、寒っ――」
目が覚めると、外はまだ少し薄暗かった。
目の前に日向の短髪が見えてぎょっとしたが、直ぐに此処が自分の部屋で、昨夜は日向が泊まったって事を思いだした。
そっか、昨日の事は夢じゃなかったんだな。
昨夜はホント凄かったもんな……途中から、無理だって言ったのに止めてくれなかったし……。
思い出すだけでも恥ずかしいあれやこれやが脳裏を過り思わず頭を抱えそうになってしまう。
取り敢えず、シャワーでも浴びてこようか。
腰から下に広がっている気だるさに苦笑しつつ、日向を起こさないようにそっとベッドを抜け出した。
ホントに腰がやばい。コレ、今日朝練出れないんじゃないだろうか?
着替えを持って部屋を出る。
階段を降りることすら億劫でどうしても緩慢な動きになってしまう。
途中、既に身支度を整えて出かける用意をしている姉さんとすれ違った。
「姉さんおはよう」
「あ、俊。おはよう……」
姉さんはそれ以上何も言わず、何か言いたげにジッとオレを見つめて居る。
「な、なんだよ?」
オレの顔に何かついているのだろうか?
やましいことをしたわけではないけれど、何となく落ち着かない。
姉さんはんー、と小さく首を傾げながら辺りをキョロキョロと見回し、そっと囁くような声で耳打ちしてきた。
「年頃の男の子二人だから、仕方ないとは思うんだけどね……」
「?」
「エッチなモノ見るときは、もう少し音量下げた方がいいと思うよ」
「!?!?」
結構聞こえてたよ。次からは気を付けてね。なんて、爽やかな笑顔でそう言って、姉さんは自室へと戻って行った。
サイアクだ。
幸い、それが動画か何かだと勘違いしているみたいだったけど、まさか聞かれてたなんて。
不測の事態に激しい羞恥心と、眩暈を覚える。
「ふぁあ……おぉ、伊月。お前んなとこで何やってんだよ」
動揺を誤魔化しきれずに立ち止まっていると、ようやく起きて来たらしい日向が呑気に欠伸をしながら出て来た。
「…………」
「どうした? 何処か痛むのか?」
「日向のせい、だからな!」
「はぁ?」
もちろん日向だけのせいじゃないことは自分でもわかってる。だけど……。
「日向があんなに激しくするから姉さんに聞かれてたんだよ!」
「……あー、伊月の声デカかったからなぁ。でも、わけがわかんなくなるくらい好かったんだろ?」
にやりと笑いながら囁かれて言葉に詰まる。
「良かったじゃねぇか。一生忘れられない誕生日になって」
「……ッ!」
そうだけど! そうなんだけどっ!!
「まぁ、若気の至りって事でいいんじゃね?」
「い、いいわけあるかっ!!」
確かに、一生忘れられない思い出にはなったけれど、もし、次があるとしたら、誰も居ない時にしよう。
そう硬く心に誓ったオレだった。




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