No title

(伊月SIDE)
「伊月、お前いつも何時に起きてんだ?」
「んー、5時かな。5時にゴジラが現れるから」
「ハイハイ。じゃ、目覚まし頼んだからな」
オレのダジャレを軽く受け流し、ベッド横に敷いた布団の中へ入ってしまう日向。
トイレから戻ってきた日向は至って普通で、さっきの事は何もなかった事にしたい。って思っているんだろうな。
それがヒシヒシと伝わって来るから、オレも仕方なく自分の布団へと潜り込む。
せっかくの誕生日。
一番に「おめでとう」は、言ってくれたけど。オレが望んでいたのはこんな展開じゃない。
オレが悪かったのか?
お休みとは言ったけど、全然眠れるはずも無くて時計の秒針がやけに耳につく。

どの位経った頃だろうか。
背後でもぞもぞと音がして、後ろから日向が覆いかぶさるようにベッドへ上がってきた。
「zzzzz……」
「日向、寝相悪いな」
あまりにもわざとらしくて苦笑が洩れる。
「ん、寒い」
とかなんとか、言いながら益々くっついてくるので、仕方なくオレの布団の中に入れてやった。
「あー、伊月あったけぇ」
「日向、くすぐったいよ」
「別にいいだろ? 抱き枕にちょうどいい大きさなんだよ」
「抱き枕って。酷い言われようだな」
可笑しくなって思わず笑ってしまう。
「伊月……さっきは悪かったな。お前と二人きりになれたのが嬉しくて、つい、がっついちまった」
驚いて振り向くと、珍しくシュンとした表情の日向が居て胸が痛む。
「謝らなくていい。オレだってがっついてたし。 日向が誕生日の瞬間を一緒に過ごしたいって言ってくれた時、本当に嬉しかったんだ。ただ……何処が気持ちいいとか、そんなの臆面もなく言えるわけもないだろ? 恥ずかしいし」
日向の指に自分の指を絡め、互いに苦笑する。やっぱり、この距離が一番安心できる。
「ハハッ、それもそうだな」
「でも、日向にならオレ、何されても構わないと思ってるから」
正直な気持ちを口にしたら、日向が面食らった顔をしてふいッと視線を逸らしてしまった。
「おまっ、そのセリフの方がよっぽど恥ずかしいだろダアホッ!」
「そうなのか? ……でも、本心だし」
「バカか、お前は。んな事言ったら色々と歯止めが利かなくなるだろうが」
「いいじゃん別に。オレは構わないよ?」
他の誰かならこんな風には考えないんだろうけど、日向になら――日向だから。
離れようとする日向の首に腕を回し、真っ直ぐに見つめる。
「他に何も要らないからさ、一生忘れられないような誕生日の思い出をくれよ」
「……ッ。もう、さっきみたいに途中で止められねぇぞ?」
「大丈夫」
「マジで嫌だつっても止めねぇからな」
「うん。わかってる。大丈夫だから――」
だから、止めないで。
背中に腕を回し、ゆっくりと近づいてくる気配にそっと目を閉じた。


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