No title

「なぁ、今夜お前ん家泊りに行ってもいいか?」
昼休み、仲良く机を並べて弁当を食っている最中に突然日向がそう言った。
伊月の箸を持っている手がぴたりと止まる。
「別にいいけど、お泊り会か? 楽しそうだなそれ。お隣もお泊りかい!? キタコレッ」
「伊月黙れ!」
「えー、あ!どうせならコガ達も誘おうか。黒子や火神とか」
お泊り会なんて何年振りだろうか? あまりにも久々でテンションが上がる。
そうだ! 火神と日向を囲んでホラー映画とか見たら面白そうじゃないか?
「なんでそうなるんだよダアホッ! 行くのは俺だけだ」
何処か拗ねたような表情をする日向を見て、伊月は「ん?」と首を傾げる。
「あぁ、飯の事なら心配しなくても……」
「ちげぇよ馬鹿! お前と二人きりになりたいっつってんだよ。気付けよ」
「!」
耳元でそう囁かれた。意味を理解した途端、伊月の手からするりと弁当箱が机の上に落ちてしまい派手な音が教室中に響き渡る。
「おまっ、何やってんだよ」
「ご、ごめん」
「たくっ……つか、大丈夫か? 顔、真っ赤だぞ」
言われて、堪らず俯いてしまった。顔が熱いのは日向が変なことを言うからだ。
机や床に散らばった弁当のおかずを拾い集めながら言われたことを改めて思い返す。
今夜、日向が家に泊りに来る。
それは、全然かまわないけれど……。
「あー、その……嫌なら断れよ。別に無理にとは言わねぇし」
「ちがっ! 嫌じゃない。 か、母さんにメール入れとくから」
「お、おぅ」
付き合いはじめて早3か月。手を繋いだり、キスをしたりは何度かした。
そろそろ先に進んでもいいんじゃないか? って、気持ちもなかったわけではない。
それに、泊まってもいいかと聞かれただけだ。いくら日向だって家族がいるのに手を出してくるはずがないじゃないか。
意識しそうになる自分が恥ずかしくて、まともに日向の顔が見れない。
落ち着け、俺……。平常心、平常心。
何度もそう自分に言い聞かせてみるものの高鳴る鼓動は中々治まってくれそうにない。
(日向が泊りに……か)
考えないようにしてもつい、思考はそちらの方へ向かってしまい結局午後の授業に身が入らなかったのは言うまでもないだろう。



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