No title

「高尾。あのぬいぐるみを取るのだよ」
「えー? 俺UFOキャッチャーとかあんま得意じゃねぇんだよ。つかなに? またおは朝占い用のストックか?」
「あぁ。早くしろ」
「へいへーい。つか、そんくらい自分で取れよ」
久々に出た街で、男4人が盛り上がれる場所なんて限られている。
しかもクリスマスなんて何処もリア充で溢れかえってるわけで、結局皆でマジバ食って、ゲーセンに立ち寄って時間を潰すといういつもとそんなに変わらないパターン。
せっかくのクリスマスだし、服とか宮地さんにコーディネートしてもらいてーなーとか思ってたのに、外野がなんだかんだと煩くてゆっくり話も出来ないまま時間ばかりが過ぎてゆく。
甘い雰囲気なんて最初から期待してなかったけど、クリスマスイブをいつものメンバーで過ごすとか……やっぱねぇわ。
宮地さんはこの状況で満足しているんだろうか?
視界の端に映る宮地さんは只今木村さんとレーシングマシーンの真っ最中。
ムキになって騒いでいるところを見ると満更でもなさそうだ。
何げに仲いいよなあの二人。
はぁ……。これじゃ、マジでいつもとたいして変わらねぇじゃん。
ほんのちょっとだけ、期待してた自分が馬鹿みたいだ。
ふと見れば、ゲームを終えた宮地さんは、数人の可愛い女子グループに声をかけられていた。
宮地さん好みの某アイドルグループにでも所属していそうな雰囲気のある娘達だ。
そんなきゃぴきゃぴした女子に囲まれて楽しそうに話をしているのを見るのは、なんとなく面白くない。
部活であんな笑顔見せた事ねぇくせに……。
くそっ、イケメン爆発しろマジで。
長時間見つめていたつもりは無かった。
けれど、ふと顔をこちらに向けた宮地さんと目が合ってしまい、咄嗟に俺は視線を逸らしてしまった。
嗚呼、自己嫌悪だ。ほんと何やってんだよ、俺……。
つか、いつの間にか俺も真ちゃんのおは朝アイテム収集に付き合わされてるし。
これじゃぁマジで普段と全然変わらないじゃん。
「――おい、高尾。聞いているのか?」
「あー悪い、真ちゃん。ちょっとボーッとしてたわ。で、今度は何を取れって?」
「フン、注意力散漫とは関心しないのだよ。まぁいい。 今の時刻を聞いただけだ」
「時間くらい自分で確認しろよ。携帯持ってんだろ? たくっ、しゃーねぇなーウチのエース様は……」
「他の店に行くのだよ、高尾。移動時間を考えればそろそろ出たほうがいい」
「ぶはっ、まだどっか行くつもりかよ。しかも、何げに俺が付き合うのは決定事項って」
真ちゃんの辞書に俺が断るという選択肢は含まれていないのだろうか? 
当然といった風に言われ、苦笑しながら時間を確認しようとジャケットのポケットを探っていると、いきなり後ろから強い力でその腕を引かれた。


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