No title

「どーしたんっすか、宮地サン。こんなところまで来て」
「うわっ!? んだよ、いきなり出てくんな馬鹿。轢くぞ!」
声をかけたら、宮地さんは本気で驚いたように数センチ飛び上がって眉間に皺を寄せた。
「ぶはっヒデー。宮地サンって目立つから嫌でも気付くっすよ。……つか、廊下さみっ」
教室とは違い、全身にスーッと冷たい空気がまとわり付いてくる。
思わず身震いをした俺を見て、宮地さんの表情が一瞬だけ緩む。
「だからもっと厚着しろっていつも言ってんだろ? バーカ」
「教室は暑いんっすよ。俺の席暖房の風が直接当たるんで。つか、一年の教室になんか用っすか?」
「用ってほどのモンでもねぇけど……今度の約束、忘れてねぇよな?」
「わかってますって。つか、忘れるわけないっしょ」
「そうか。ならいい」
俺の言葉を聞くと、何処かホッとした表情を浮かべくるりと踵を返す。
「あ、そうそう。行きたいとこ考えとけよ」
背を向けたまま、それだけ言い残して宮地さんは戻って行ってしまった。
つか……用って、そんだけ?
今の、わざわざウチの教室に来なくてもメールかLINEで充分なんじゃ。
どうせ放課後も部活で顔合わせるじゃん……。
もしかして、俺に会いに来てくれた……とか?
一つの答えに行き着いて、体温がぶわっと上がった気がした。
いやいやいや、それはねぇか。多分。
でも、それ以外の理由なんて思いつかないし。
もし、本当に俺の顔見に来てくれたんだとしたら……?
うわっやっべ、ニヤける。
「やはり火曜は宮地さんと過ごすのか……」
「のわっ!?」
突然肩に顎が乗り耳元で囁かれて、心臓が口から飛び出しそうになった。
「真ちゃん、気配絶って近づくなよ。すげービビったわ、俺」
「高尾が宮地さんと……か……」
俺の話なんか聞いちゃいねぇ真ちゃんが、目を細めて意味深な表情を浮べる。
なんだか嫌な予感。
「真ちゃん、なんか企んでねぇ?」
「さぁ、な……」
俺がそう言うと、真ちゃんは意味ありげに口元だけ笑いメガネを押し上げた。
なーんか怪しい。たまにコイツは何考えてんのかわかんねぇ時があるから怖い。
何事もなければいいんだけど。


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