No title

「なぁ伊月、腹減った。なんか食うモンねぇか?」
日向がそんなことを言い出したのは、放課後誰もいなくなった教室で数学を教えてやっているときだった。
「食い物って、日向勉強する気あるのか?」
「あるけよ。けどさ、腹が減ったら戦ができねぇんだよ。なぁ、マジ何も持ってねぇの?」
すっかりやる気を無くした様子の日向。
仕方なく鞄の中を探っていると、指先になにか硬い感触が。取り出してみるとそれはピンク色のパッケージに彩られたポッキーの箱だった。
「悪い日向。今はポッキーしか……。ハッ! ポッキーがポッキーンと折れた! キタコレッ!」
「全然キてねぇよ! つかそれ、ダジャレじゃなくて寧ろ由来だろ!」
「じゃ、こんなのはどうだ? ポッキーの値段? 千円ぽっきりー!」
「ダアホッ高けぇよ、それ! ぼったくりじゃねぇか」
「ぼったく、ぼっ、ぽっき、ポッ、ポッ……」
「あーもー、無理すんなよ。つか、ソレ、早く寄越せダアホッ!」
俺がダジャレを考えている間に日向は手から箱を奪うと躊躇いもなく箱を開けつぶつぶイチゴを口にくわえる。
「伊月、お前も食えよ。美味いぜ」
「食えよって。それ、元は俺の……」
口にくわえたまま喋る日向に苦笑していると、何かを思いついたのかほんの一瞬日向の眼鏡がきらりと怪しく光った気がした。
なんとなく、嫌な予感。
「なぁ、アレしてみようぜ」
「アレ?」
「ほら、アレだよ、あ、れ。ポッキーつったら定番だろうが」
早く座れと促され、仕方なく向かい合わせで座ると、早く咥えろばかりにポッキーを口に含んだまま顔を近づけてくる。
これってつまり……そういうことだよな?
「あにしてんだ、さっさとしろよ」
「え? コレマジでやるのか?」
「っせーな。俺がやりてぇっつってんだから素直に従っとけ! ダアホッ!」
ぎろりと睨まれて肩を竦めた。
いくら誰もいないといっても恥ずかしいから、あまり乗り気はしないんだけど……。
改めて顔を近づけてみたら、日向との距離の近さに思わずどきりとさせられる。
「い、一回だけだぞっ! これ終わったら課題の続きするんだからなっ!」
早くも視線を逸らしてしまいたい衝動に駆られたが、なんとか堪えドキドキする鼓動を悟られないように小さく息を吐いてそっとポッキーの端を口に含んだ。
「わーってるって。じゃ、スタートな」


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