No title

「す、すんませんっ電話っ!」
「ぅお!?」
ハッと我に返った高尾が慌てて宮地を突き飛ばし、ローテーブルに置かれていた携帯を慌てて掴んで耳に押し当てた。
「高尾。今、何処にいるのだよ」
聞き慣れた緑間の声を聞いたとき、高尾は無意識に宮地に背を向けていた。
急にふらりと居なくなって、いつまで経っても戻ってこない高尾を心配(?)してかけてきたらしい緑間に申し訳ないような照れくさいような複雑な気持ちが沸き起こる。
なんと答えていいのかわからずに黙っていると、電話の向こうで小さな溜息が聞こえてきた。
「監督がお前に話があると言っていたぞ」
「監督が? マジで?」
後ろで不機嫌そうにこちらを睨みつけている視線を感じながら思わず声のトーンを落とす。
どうやら、今度予定されている練習試合の日程や細々した話があるらしい。
それは早く戻らなければと思っていると不意に後ろから抱きしめられて肩に宮地の顎が乗った。
思わず声を上げてしまいそうになり、慌てて口を噤む。
背中から抱かれて身体を押しつけられ、宮地の熱や匂いを感じると身体がカッと熱くなってしまう。
「どうした?」
「な、なんでもねぇよ。直ぐ戻るからさ、監督には上手く言っといてくれよ」
訝しがるような緑間の声に身を硬くし、一方的にそう伝えると慌てて電話を切った。
「んだよ、戻るのか?」
「なんか監督が俺のこと探してたみたいなんで。黙って出てきたから他の部員たちにも示しがつかないっつーか……」
直ぐ戻るつもりだったから怒られるのは目に見えているが。
「チッ、緑間のやつ、副キャプテンだろ? 代わりに聞いとけっつーの!」
「ハハッ」
「……監督が呼んでんなら仕方ねぇから送って行ってやるよ」
「えっ? いいんっすか?」
「いいも何も、道わかんねぇだろ。お前」
苦笑しながら言った後、でもその前に、とおもむろに顎を掬われた。
そのままゆっくりと唇を塞がれ深く口付けられる。
「ふ、んっ……宮地さ……ぁっ」
宮地はキスが上手い。舌だけでなく歯茎や頬の内側など、今まで知らなかった性感帯をどんどん浮かび上がらせ腰がぞくりと震えた。
しっとりと長いキスをして顔を離した瞬間にカクリと膝が折れた。腰に痺れが来て立っていられず宮地にしがみつくような体勢になってしまう。
「大丈夫か?」
「ず、ずるいっす……こんなキス……」
顔を真っ赤にして拗ねたような表情をする高尾が可笑しかったのか、宮地がククッと喉で笑った。
「続きは、また今度……な。たっぷり時間をかけて教えてやる」
「……っ」
耳元で甘く囁かれ思わず絶句。
キスだけでいっぱいいっぱいなのに、コレ以上先になんて進めるのだろうか?
「俺……そのうちどっかで煙でもはいてぶっ倒れてそう……」
これから先の事を想像し、嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分で高尾はひっそりと息を吐いた。


続く……? 


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