No title

あらかじめ準備されていた着替えに袖を通し、部屋を覗いてみると宮地はベッドを背もたれ代わりにしてテレビを眺めていた。
どう切り出せばいいのかわからず、困惑しているうちに宮地と目があってしまいぎくりと体が強ばる。
「着替えすんませんでした。つか、なんで秀徳のジャージなんっすか。しかも無駄にでけぇし」
服を用意して貰っておいて文句を言えた立場ではないが、やはり自分に宮地の服は大きすぎる。
「っせーな。裸でいるよかマシだろうが。お前にはその格好が似合ってんだよ」
「ぶっはww ひっでー」
「ふん、少しは落ち着いたみたいだな」
思わず苦笑してしまった高尾を見て、宮地は小さく息を吐くと体を起こした。
向き合うような体勢になり、ハッと息を呑む。
どう返事をしようか迷っていると、宮地の視線が真っ直ぐに高尾を捉えた。
「その……さっきは、悪かったな」
宮地は直ぐに視線を逸らすと、頭を掻きながら言いにくそうにぽつりと漏らした。
「なんで宮地さんが謝るんっすか? 別に俺のことが嫌いでも、それは仕方がないことだから謝る必要なんてないっしょ」
「あのなぁ、オレがいつ、お前のことが嫌いだなんて言ったよ」
「それは……言ってなかったですけど……でも、俺に会いたくないって……今まで、顔見せに来てくれなかったのは俺が居たからっすよね?」
それは、と宮地は一瞬言葉に詰まった。暫く視線を逡巡させた後、意を決したように視線がぶつかる。
「オレが来たくなかった理由は確かにお前がいるからだ。でもそれは、お前のことが嫌いだからじゃねぇ」
「えっ? それってどういう意味っすか?」
思わず声が裏返った。自分が原因なのに、嫌いじゃない?
それ以外の理由って一体ーー?
「その逆だ……。お前に会ったらきっと、色々と我慢できなくなるような気がしたから会いたくなかったんだよ」
「宮地さん、それって……もしかして」
宮地の言わんとする事がわかって、急に胸がドキドキしてきた。
「オレは、フられんのがわかってて告るほど大人じゃねぇんだよ!」
「ぶっっはww宮地さん顔真っ赤……」
目の前でみるみるうちに赤くなっていく宮地を見るのは新鮮で、思わず笑いがこみ上げてくる。
「宮地さん、かっわいー」
「うっせー! 調子に乗りすぎだぞ馬鹿! 締めんぞ!」
全然痛くないヘッドロックをかけられ、同時に嫌われて居なかったという事実にホッとして目尻に涙が浮かんだ。
フられるのが怖くて言い出せなかったのは自分も同じだ。
いつからそうだったのかはわからないけれど、自分と同じ気持ちで居てくれた事が素直に嬉しかった


[prev next]

[bkm] [表紙]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -