No title

「高尾君。話があるんだけど……ちょっといいかな?」
放課後、部活にいく支度をしていると、クラスの女子に声を掛けられた。
派手な感じのしない目立たない大人しそうな子だ。
誰も居なくなった教室で慎ましやかに高尾への好意を告げられた。
「一年の頃からずっと好きだったの。よかったら付き合って欲しいんだけど……」
恥ずかしそうに床を見つめて、高尾の返事に胸をどきどきさせているのが手に取るようにわかる。
「悪いけど俺、つき合えねぇわ。すっげー好きな人がいんだよ。ゴメンな」
彼女は明らかに落胆し、何か言いたげに顔を上げたが言葉が出てこないのか、目にいっぱいの涙を堪えて笑顔を作って見せた。
「そっか、じゃぁ仕方ないね」
ごめんね、また明日。そう言って彼女は手を振り教室を出ていった。
ああ、コレで何回目だろう。
二年になってから告白される回数が増えたように思う。
高校に入学したばかりの頃だったら、きっと喜んでOKしていたに違いない。
彼女は悪い噂も聞かないし、実際いい子だとは思う。
きっと付き合っていくうちに彼女の事を好きになって普通の恋愛をして色々な経験をするのだろう。
でも。そんな当たり前の日常を引き替えにしても……。
宮地の事を思うと胸が締め付けられるほど苦しくなる。
彼の仕草が、瞳が、声が記憶にこびり付いて離れない。
彼のいない毎日は何処か物足りなくて、寂しくて、景色が色褪せてしまったかのように感じる。
会いたい。会いたい、会いたい。 会って思いを伝えたい。
あの時に言えばよかった。後悔ばかりが先に立つ。
卒業式の日に伝えられなかった思いは膨れ上がり、切なさで今にも心が張り裂けてしまいそうだ。


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