No title

昔から雨は嫌いだった。
服は濡れるし、やりたいことの半分以上は制限されてしまう。
傘なんて差して歩いた日には片手が塞がって不便な事この上ない。
だから今日も、突然降り出したこの雨に半ばうんざりしていた。
バケツの水をひっくり返したような激しい雨は、携帯用の傘ではとても対応しきれそうにもない。仕方なく俺は偶々通りかかった商店街の軒下で雨宿りをすることにした。
取り敢えず濡れたのは肩だけで大した被害もなくホッとしていると、少し遅れて誰かが駆けてくるのが見えた。
俺と同じ制服の袖に黒いラインの入ったシャツを着て、スポーツバックを抱えて走ってくるシルエットには見覚えがある。
「……」
バシャバシャと水音を立てながら軒先に駆け込んできたソイツは、ぶつぶつと文句を言いながらやってきて恨めしそうに空を見上げる。
 前髪からポタリと落ちた水滴が首筋を伝い服の中へと消えていく。
「たくっ、ついてねぇな……」
一向に止む気配のない雨を眺めながら、滴り落ちる雫を指で拭う。
 湿り気を帯びた制服から肌が透けて見えて、想像以上の逞しさに一瞬目が離せなくなった。
俺がアイツの姿を見間違う筈がない。
「日向……」
声を掛けると、ようやく俺の存在に気が付いたのかハッとしたように顔を上げた。
眼鏡の奥にある切れ長の瞳が俺の姿を映し出し、驚いたように目を丸くする。


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