No title

夢にまで見た初体験は可愛い可愛い俺の彼女。じゃ、なくて……。





柔らかそうな茶色の髪、一見優しそうな見た目とは裏腹に、バスケ部一怖いと恐れられている二つ上の先輩(♂)だった――。


あーぁ、なんでこんな事になったんだか……。
隣りで穏やかな寝息を立てている先輩の顔を眺め、思わず溜息が洩れる。
彼女が欲しいとずっと思ってはいたけれど、実際バスケと恋の両立なんてとうてい出来る代物じゃなくて、俺の青春は全部バスケに捧げよう! って決めていたのに、よりによって同じ部活の先輩に初めてを奪われるなんて――。
「マジ、ありえねぇ……」
「何が有り得ないんだ?」
ぽつりと呟いた言葉に返事が戻って来て驚いて顔を上げると、今まで閉じられていた琥珀色した鋭い双眸が俺の姿をまっすぐに見据えていた。
「なっ、起きてたんっすか?」
「あぁ、穴が空きそうなくらい見つめられたからな。目が覚めた」
そんなに俺の顔が好きなのか?
なんて、ニヤリと笑いながら言うもんだから自然と昨日の情事を思い出して顔がかぁっと火照ってしまう。
「ち、ちげーし! 変な誤解しないでくださいっ!」
「ふぅん……ま、何でもいいけどな。 ほら、いつまで寝転がってんだ。風呂行ってシャワー浴びて来いよ」
慌てふためく俺とは対照的に、涼しい顔をした先輩が昨夜ベッドの脇に脱ぎ散らかしたままになっていた俺の着替えを放り投げて寄越す。
つか、宮地さんにとっては俺と夕べあった事なんて大した事じゃなかったんだろうか。
そう考えると、なんだか虚しくなってくる。
そもそも、どうしてこうなったんだっけ?
昨夜は俺のテスト勉強に付き合ってくれて、帰るのが遅くなっちまって……。
泊まってけよって言うから、「じゃぁ宿泊代金は身体で払いますんで」って軽いジョークのつもりで言ったのに宮地さんがマジになっちゃって、あれよあれよと言う間に……。
ああ、自己嫌悪だ。


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