No title

その後、他の部員や監督が来るたびに同じ説明をし、みんなに可愛い、可愛いと頭を撫でられた。
監督に至っては膝に抱っこしてやろうか?とまで言い出す始末で、その度に高尾が窒息寸前まで笑い転げた。


今日は厄日か? はたまた祟りか。
日頃の行いがそんなに悪かったのだろうか? 
練習後、この姿のままでは自宅に帰れない事が判明した宮地は、仕方なくリアカーに乗せられ緑間と共に高尾家へと連れてこられた。
両親は親戚の結婚式で出払っているというだけあって室内はシンと静まり返っている。
「つーか、なんで緑間まで一緒なんだよ!」
「え? 真ちゃんは前々から今日泊まるって約束だったんです」
「そうかよ……」
何処か嬉しそうにウインクを一つされ、宮地はやっぱり木村の家に泊めて貰えば良かったと激しく後悔した。
聞けば、高尾の溺愛している妹は、気を利かせているのか友人の家へ泊りに行っていないらしい。
「ねー、宮地さん。一緒にお風呂入りません? ちっちゃいから大変っしょ? オレ背中流してあげますよ♪」
「いらん世話だ馬鹿! 自分で体位洗えるっつーの! 小さい小さい言うな殴るぞマジで!」
「えーいいじゃん。入りましょうよ〜」
「……てめぇのチ○コに石鹸ぶっさしていいなら入ってやってもいいが?」
「ブッフォツ! 宮地さん目、笑ってねぇし」
そんなやり取りを少しして、風呂場に向かうと熱いシャワーを頭から被る。
正面の鏡に映る自分の姿を見て、もう何度目かもわからないため息が洩れた。
「たくっ、どいつもこいつも馬鹿にしやがって……」
背が低くて童顔。色もどちらかと言えば白い方だし、ややクセのある柔らかい髪も好きじゃない。何よりこの中性的な顔立ちが嫌いだ。
もう二度とこの姿を目にすることなんてないと思っていたのに。
「宮地さん、着替えここに置いておくっすよ」
「おー、悪いな」
脱衣所から声がかかり適当に返事をした。
しばらくお風呂で温まった後、高尾が用意した子供服を着て浴室を出ると、何やら二人がリビングで話をしているところだった。
「えーっ! じゃぁ、宮地さんが小さくなったのってやっぱあの飴玉のせいなのか?」
「あぁ。アレは赤司から貰ったものなのだよ」
「……なんで赤司がそんなものを……ん? ちょっと待てよ。真ちゃん確かオレに『喉飴だから食え』って、言ってなかったか? 少し喋りすぎだから食った方がいいとかなんとかって……」
「…………そう、だったか?」
「そーだよ! でもオレ別に喉痛くねぇし、宮地さんが喉が痛いつってたからちょうどいいやって思って渡したのに――って事は何か? もしかして真ちゃんあんなものをオレに食わせようとしてたわけ?」
「さぁ、俺にはそんな記憶がないのだよ」
「ブフォ! 嘘吐けって! おまっオレにあんなもん食わせて何しようとしてたんだよ」
「何って、別に。お前の小さな頃の姿をこの目で見たいと思っただけなのだよ。写真で見たお前の子供の頃の姿が愛らしくて自重できなかった」
「いやいや、ソコは自重しろよ」
「だが効果はあまり期待していなかったし、あそこまで覿面に効くとは思わなかったのだよ」
二人の会話を要約すればつまり自分は高尾の代わりに間違って薬を飲まされた被害者だ。
「……ほほぉ……俺がこんな目に遭ったのは緑間てめぇのせいだったのかよ……」
ビキビキッと額に青筋が浮かぶのが自分でもわかった。
声に驚いた二人が一斉にこちらを振り向く。
「み、宮地さん……今の聞いてたんっすか」
「宮地さんのお陰で、安全性と効果のほどが確認出来ました。ありがとうございます」
しれっと言い放ち眼鏡を押し上げる仕草に怒りのメーターがグングン上昇していく。
「つーか、真ちゃんオレ絶対食わないかんな! それっ!」
「何がありがとうだ、てめっ!ボコる! いや、絶対轢くっ!」
二人の声が重なり合って家じゅうに響き渡る。
「五月蠅いのだよ。近所迷惑だ」
「てめぇのせいだろうが!!!!!」
この後、宮地の飛び蹴りが緑間の腹に炸裂したのは言うまでもないだろう。
(オレ、真ちゃんから貰うものは口にしないようにしとこ……)
その光景を眺めながら、高尾はひっそりと息を吐いた。


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