No title

「おい! バカ尾!!!」
バーンと勢いよく体育館の扉が開き、少年特有の張りのある声が練習中の体育館に響き渡り、部員たちの視線が一か所に集中する。
そこにいたのは身長一二〇cm程の小さな男の子。何故かだぼだぼのTシャツを頭らか被った少年はツカツカと高尾の前までやってくるとキッと彼を睨み付けた。
「お前のせいだぞ! 何とかしろ!」
「????」
突然見知らぬ少年に言いがかりをつけられ、高尾の頭にはクエスチョンマークがたくさん浮かぶ。
小学生に知り合いがいない事もないが、目の前にいる少年に見覚えはない。
「おいおい高尾。お前ガキ連れてくんなよ〜」
「オレしらねぇっすよ!」
「どうせ、トレーディングカードでも巻き上げたんじゃねぇの?」
「ちょっ、木村さんひっでぇ! 確かにカードゲームは好きだけど小学生から巻き上げたりはしませんって!」
全く身に覚えがないのに酷い言われようだと、苦笑しながら少年の視線に合わせてしゃがみこみ困ったように頬を掻いた。
「えーっとさ、君オレの知り合い?」
「ふっざけんなてめっ! 誰のせいでこんな姿になったと思ってんだよ轢くぞ!」
「ぶふぉっ、轢くぞ! だって。宮地さんみてぇっ」
「だから、俺だっつってんだよ馬鹿尾が!」
何故か怒っている少年にガッと小さな手で胸倉を掴まれ、思わず目が点になる。
「……宮地、さん?」
「ああ」
「バスケ部厳しくて超怖いくせに意外と面倒見が良くてツンデレでドルヲタの?」
「……てめぇ……普段俺をどんな目で見てやがる」
目の前にいる少年の頬がヒクヒクッと引きつり再びキッと睨み付けられる。
よくよく見てみれば何処となく宮地の面影が残っているような気もする。
少しクセのあるはちみつ色の髪、口癖でもある物騒な言葉。
中性的で整った顔立ちも、何となく成長した姿が連想できなくもない。何より、少年が着用しているシャツは宮地がいつも練習用にと愛用しているものだ。


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