No title

「高尾……」
酷く艶っぽい声に名を呼ばれ息を呑んだ。
気が付けば目前に宮地さんの顔があってするりと唇を寄せてくる。
心臓がバクバク言ってて自分の物じゃないみたいだ。
「――っ」
と、その時。
「あー、いい風呂だった。宮地! 次行って来いよ」
「!?」
突然がらりと部屋の引き戸が開いて、大坪さん達が部屋に戻ってきた。
重苦しかった空気が一瞬にして振り払われ、いつもの喧騒が戻って来る。
でも――。
「……だ、そうだ。どうする? 高尾」
耳元に息を吹きかけるようにして熱に濡れた声が囁きかけてきて思わず身体がひゃっと竦んだ。
「ど、ど、どうする……って?」
お風呂の中で続きとかヤっちゃうみたいな?
「足……」
「あ、あし?」
「右足だけでいいのか? マッサージ」
「あ……!」
そう言えば、ただマッサージしてもらってるだけだった!
「〜〜ッ宮地さんわざとからかってるっしょ!?」
オレの反応が余程可笑しかったのか、宮地さんがくっくっくと肩を震わせながら笑っている。
「何の話だか。それより、行くぞ」
「へ? 行くって?」
ひとしきり笑った後、何を思ったのか突然立ち上がった宮地さんに腕を掴まれた。
困惑を隠しきれないオレに宮地さんはニッと笑って言った。
「風呂だよ。風呂。マッサージしてやったんだから、背中ぐらい流してくれんだろ」
「……っ」
この人、無駄にかっこよくてムカつく。
「あっれ、オレとは余計に疲れそうだから一緒に入らないって言ってませんでした?」
「あ? 嫌なら別にいいんだぜ? 俺は入って欲しいなんて言ってねぇし」
フンと鼻で笑いながら、どうするんだ?と尋ねてくる。
でも、そんな言葉とは裏腹に差し出された手を見て、思わず笑いが込み上げた。
「宮地さんに誘われたら、行かないわけにはいかないっしょ」
「別に誘ってねぇって! おら、行くぞ!」
「ふへっ、はーい」
半ば強引に掴まれた腕の熱さに苦笑しながらオレは表情が緩むのを止められなかった。


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