No title

「痛いんだろ? 足。少しでも解しとかないと明日からもたねぇぞ」
「うっわマジっすか!? 宮地さんが優しいとか、明日は槍でも降るんじゃね?」
「……別に、嫌ならいいんだぜ?」
言うが早いか脹脛の辺りをぐりぐりと力いっぱい押してくる。
「アダダダッ、うそっ、冗談! 冗談っす宮地さんやめっ! イテテテッ」
あまりの痛さに悶え、目尻に生理的な涙が浮かんだ。
「ふんっ、てめぇは一言余計なんだよ」
「……っ」
宮地さんってホントよくわかんねぇ。すっげー怖い人かと思いきや突然優しくしてくれたり、その逆だったり。
ただ、なんだかんだ言って面倒見はいいんだと思う。
オレの投げ出した足を宮地さんが脹脛の辺りから優しく揉むようにマッサージしてくれる。
その絶妙な力が加減が痛気持ち良くて全身からうっとりと力が抜けていく。
バスケ部一怖いと恐れられてる宮地先輩に足マッサージされるなんてオレって超贅沢。
「宮地さんにこんな事させんのってオレ位なもんっすよね〜」
「そうだな。……見てて世話焼きたいと思うのは、お前だけだ」
「……っ!」
あまりにも自然に、さらりととんでもない事を言うから、ドキリと鼓動が大きく跳ねた。
嬉しそうな顔してそんな事言うの反則っしょ!
一回意識してしまったら、ソコに神経が集中してしまい、ただ痛気持ちいいだけだった所に別の感覚が混じり始める。
今まで何も感じて無かったのに、急に宮地さんの手がいやらしい触り方をしているように思えて触れられている脹脛のあたりから、ゾクゾクするような甘い痺れが沸き起こった。
「……んっぁっ」
しまった! と、思った。けれど時既に遅し。
思わず洩れてしまった声に宮地さんの手がぴたりと止まる。
身体を起こした宮地さんがオレの顔を覗き込むように視線を上げた。
熱を孕んだ瞳に見つめられ、じわじわと顔が熱くなっていくのが自分でもわかる。
宮地さんは普通にマッサージしてくれてただけなのにオレの馬鹿〜!
「……」
気まずい空気がオレ達を包み込み、でも熱を帯びた視線から目を逸らす事も出来なくて嫌な沈黙に、じわりと冷たい汗がにじみ出た。
屈んでいた宮地さんがゆっくりと近づいてくる。でも、オレは凍りついたように動けない。
頬に手が伸びてきて耳を擽る様に撫でられて身体が竦む。
どうしよう、何か言わないと。そう思うけどこういう時に限ってオレの唇は上手く働いてくれない。


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