No title

うわ……なんだよ、コレ。日向との距離がめちゃめちゃ近い。

日向の熱さが伝わって来そうで、俺の鼓動も自然と早くなる。

不意に日向の背後で木吉が揺らめいて、あろうことか耳をべロリと舐めた。

「……っ!?」

「!?」

びくりと大きく日向の身体が跳ねる。

「ば、っか……止めろって!」

「ん〜?」

俺の存在に気付いていないのか、木吉が首筋に舌を這わせる所までバッチリと見てしまった。

うわわっ、おいおいおいっ! な、何やっちゃってるんだよ木吉!?

「マジ、やめ……っ。てめっ……」

眉根を寄せ、はぁっと日向が色っぽい息を吐く。

毛布を胸元まですっぽりと被っている為、中でなにが行われているのかまではわからない。

だけど、それが普通のスキンシップじゃないことくらいオレにもわかる。

「ちょ、ばっ……ばか何処触ってんだ!! ヤメロ!!」

「嫌だ。もう三日もお前に触れてない」

「触んなくていいんだよ! アホっ!」

「おれが触りたいんだ」

「〜〜〜っ!!」

ナニコレ!? こいつらそう言う関係だったのか!?

オレの日向をいつの間にっ!

ガーンと、頭を何か鈍器で殴られたような衝撃だった。

日向はダチで、憧れで……怖い話とか苦手な可愛い奴で、誰よりもバスケが大好きで……。

ずっとこの思いは知られちゃいけないと思ってオレの心の中に秘めて来たのに。

一体どうやって日向を――?

動揺するオレを他所にチュッ、チュと軽いリップ音が耳に届く。

「っ、バカ! 木吉やめ……っンっ」

「声、エロい」

「っ……! く、ぅ……は……っ」

枕に顔を押し付けて声を押し殺す姿。こんな日向見たことがない。

木吉は毛布の中に潜り込んで一体なにを……!?

「あっ、やめっ! 木吉。頼むから……」

「可愛いなぁ日向。いいのか? 止めても。こっちは嫌がってないみたいだぞ」

「――っ! くっ……てめっ、後でマジぶん殴る!」

「わかったわかった。だから、ヤろう」

「〜〜〜っもう少しオブラートに包め! このダアホっ!!!」

って! 日向ぁ!? おいおいおいっ! ソコは断固として拒否る所だろ!?

お、オレ起きてんだけどっ! 此処! みんな居るんだぞ!?

他の誰かが起きたらとか、考えないのか?

コレは夢か? 悪い夢なのか?

そうだ! きっとコレは悪い夢だ。

オレは疲れてるんだ。だからこんな夢を――。

って、オレにはなんも得することなんてないけどっ!

ていうかオレは一体どうしたら――!?

全身から汗がダラダラと噴き出して、身体が硬直する。

今、少しでも動いたら不自然な気がして、寝返りを打つことも出来ない。

それどころか息をするのもまずいのでは? と、思ってしまうくらい息苦しい。

コレは見ちゃダメだ。日向の名誉の為にも見なかった事にしなくては!

あぁ、でも。

日向の乱れる姿なんて滅多に見られるもんじゃない。

「――ふ、ぅ……んっ……」

目の前で、日向の短い髪が揺れる。

目尻にいっぱい涙を浮かべながら、枕に顔を押し付けて指先が白くなるくらいシーツを強く握りしめる姿。

「――っ」

なんか……もう、ごめん日向。

可愛いかもしれないと思ってしまった自分が怖い。



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