No title

「あー……マジ疲れた。オレもう歩けないかも〜」
地獄の夏合宿2日目。全身のとてつもない疲労感に苛まれながら部屋に戻る。
強豪校と謳われる一軍の調整合宿だ。半端ない厳しさだろうなって覚悟して来たつもりだけど、正直ついていくのがやっとで練習が終わるころになるともう立っているのもやっとと言った感じだ。
それでも真ちゃんは「今日のノルマがまだ達成していない」とか何とか言って一人黙々とシュート練習に励んでいる。
オレも本当は付き合ってやりたかったけど、体力的に無理過ぎて一足先に戻って来てしまった。
情けないな〜オレ。
今年のオレの目標は当面体力作りになりそうな予感。
「おい! 邪魔だ馬鹿。んなとこで寝るんじゃねぇ。轢くぞっ」
「んぁ〜?」
真新しい畳の上で寝そべって、イグサの香りに癒されていると、ふっと頭上に影が射した。
目の前には額に怒りマークを付けて笑っている宮地さんの姿。
「すんまっせん。すぐ起きますっアイテテ……」
慌ててガバッと飛び起きて、体に走る鈍痛に思わず顔を顰める。
「なんだオマエ、ボロボロじゃないか……大丈夫かよ」
「あんま大丈夫じゃねぇっす……体中怠くって。足なんかもうパンパンっすよ。って、あっれ? 大坪さん達いないんっすか?」
痛む身体を壁に凭れ掛け辺りを見回してみれば部屋にいるのは俺と宮地さんのふたりだけ。聞けば二人は連れ立って風呂に向かったんだとか。
宮地さんと部屋で二人きり……ちょっと嬉しいかも。
「宮地さんは風呂行かなくていいんっすか?」
「俺は混雑してんの嫌いなんだよ。軽くシャワーは浴びてきたし、もう少し空いてからにするわ」
「ふぅん……じゃぁオレも宮地さんと一緒に風呂入ろうかな。なんちゃって」
冗談めかして言うと宮地さんが一瞬表情を緩めた。
「俺の裸を拝もうなんて10年早ぇよバーカ!」
言うが早いかこつんとおでこと軽く小突かれた。全然痛くないデコピンに思わずオレも笑ってしまう。
「お前と入ると余計に疲れそうだからな」
「ぶっはっ! 何すかそれ。オレだって風呂くらい静かに入るし」
「どうだか。そうだ、風呂入る前に少しマッサージしといてやるよ」
「へっ? マジで? いいんっすか?」
突然、投げ出したままになっていた右足をぐいっと持ち上げられてオレは戸惑ってしまった。


[prev next]

[bkm] [表紙]

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -