No title

「――まさか、馬鹿でイかれるとは思ってなかった」
「宮地さんが悪いんっすよ。い、いきなり、す、好きとか言い出すからっ」
二人してシャワーを浴び、何気なくテレビを付けながらソファに凭れる。
宮地の腕に凭れるようにして、クッションに顔を埋めながらぶーぶーと文句を垂れる姿に思わず苦笑が漏れた。
「いきなりあんな事言うなんて反則ですって」
「んだよ、反則って誰が決めたんだ?」
「俺が今、決めました! 普段好きって言ってくれないクセにずるい」
なんだそりゃ、ずるいって。
「ね、もう一回好きって言ってください」
「……っ」
ガバッと顔を上げた高尾が、期待に満ちた瞳を向けてくる。
だが、お互い大学生になり少し大人になったとはいえ、素面で愛の言葉を紡げるほど宮地は大人ではない。
「……気が向いたらな」
誤魔化すように額にそっと口づけて、半ば乱暴に頭をくしゃりと撫でてやる。
「うっわ! そんなんで誤魔化せるほどオレ初心じゃねぇし! つーか、いいじゃん好きって言うくらいさぁ。宮地さんの口からちゃんと聞きてぇな。ねぇねぇ、宮地さん」
「あーもー! マジ轢くぞうぜぇっ!」
納得いかないと言った顔で見つめてくる相手に思わず盛大な溜息を吐き、グイと引き寄せてデコピンを一つ。
「じゃぁ、これからヤる時は電気つけっぱでヤんぞ。もちろん俺の部屋で。それでもいいなら言ってやる」
どうすんだ? と尋ねれば、高尾は口を尖らせながらぶるぶると首を振った。
「んな事言うとかマジずるい」
先程の行為を思い出したのか真っ赤になってクッションにずぶずぶと顔を埋める高尾を見て、思わず喉で笑ってしまった。
本当に、高尾と一緒にいると退屈しなくて済む。
(ま、いつか……そのうち言ってやってもいいか?)
腕の中にいる高尾の存在に幸せを噛みしめながら、宮地はもう一度高尾の頭をくしゃっと撫でた。


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