No title

「…………」
「オイ、何怒ってんだ。いい加減機嫌直せや」
喉元過ぎればなんとやら。後処理を終え、宮地がリビングに戻って来ると、正気に戻った高尾がソファに凭れた状態でクッションに顔を埋めていた。
「宮地さんの馬鹿っ! 俺もう家族の前でイチゴ食えない」
「あ? 食えばいいだろ気にせず」
「出来ないっすよ!! だ、だってその……色々と思い出しちゃうじゃないっすかっ」
もごもごと口籠りながらクッションをぎゅうっと抱きしめている姿を見て、宮地は面倒臭そうに頭を掻いた。
「つまりアレか。イチゴの練乳掛け見るとさっきのを思い出しちまうって、そういう事か」
宮地の問いに高尾はコクコクと頷く。
家族だんらんの最中にデザートで妄想して、いちいち赤面する高尾と言うのはなかなかに面白い。
「別にいいんじゃね? おもしれー」
「お、おもっ、面白くねぇし!」
「あーもー! うるせぇな。ぎゃんぎゃん喚くな埋めんぞコラ! だったらイチゴ食う時だけ家に来いよ。 たっぷり可愛がってやるから」
隣に腰かけ乱暴に肩を引いて抱き寄せると、高尾が頬を赤く染めながらふるふると小さく首を振った。
「え、遠慮しときます。なんか、毎回こんな事されたんじゃオレの身が持たない」
「するかボケっ! イチゴ食うたびにんな事してたら木村に殴られるわ! つか、練乳使わなきゃいいだけの話だろうが」
ちょっと強めにおでこを小突くとよほど痛かったのか高尾が額を押さえて小さく呻いた。
「痛って〜……」
「だいたい……毎回んなエロい姿見てたら俺のがどうにかなっちまうっつーの」
乱暴に高尾の頭を掻きまわしながら宮地がぼそりと呟く。
「えっ? 今、なんか言いました?」
「なんでもねぇよ……」
「?」
毎回あんな姿を見せられたら理性が持たないが、時々なら……。
幸い、まだ練乳はたっぷりと余っている。
ふと頭を擡げたよこしまな感情に気付き、思わず失笑が洩れた。
「ハッ、馬鹿馬鹿しい……」
「へ? ちょっ、何が? オレにもわかるように説明してくださいよ〜」
「取り敢えず、当分お前が来たときはイチゴだっつーことだよ」
「えーっ、なんっすかそれっ! 意味わかんねぇし! つか、オレの話ちゃんと聞いてました!?」
「あーもー! 五月蠅いって! 喚くな馬鹿っ」
イチゴはそこまで好きじゃないし、甘いのも正直言って苦手だ。
イチゴミルクなんてもっての外だと思っていた。
でも、高尾と一緒になら美味しく食べれそうな気がする。……色んな意味で。
くしゃくしゃと高尾の頭を掻き混ぜながら、宮地はふと、そう思った。


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