No title

「なにニヤニヤしてんだよ。気持ち悪い」
「うっわ、ひっで! いや、なんかこうやって一緒に台所に立ってるのって、新婚さんみたいじゃないっすか? なんかいいなぁって……ぅぐっ」
へらっと笑ったらいきなり脇腹を小突かれた。
本人は軽めにしたつもりだろうが、油断していた腹には結構効く。
「痛って〜……も〜、なんっすか宮地さん」
「馬鹿な事言ってないで、さっさと持って行け!」
「!」
ふいとそっぽを向いてまな板を洗う宮地の表情は読み取れないが、耳がほんのりと赤く染まっている事に気付き思わず失笑が漏れる。
「うははっ、宮地さん耳まで真っ赤になっちゃって! あのくらいで照れちゃったんっすか? じょーだんっすよ、冗談。つか、すっげ可愛い〜」
けらけらと笑う声がどうやら勘に触ったらしい。いきなりぐわっと胸倉を掴まれて黒い笑顔で包丁を突き付けられた。
「今すぐてめぇを三枚におろしてやってもいいんだぞ?」
「ちょっ、宮地さん、目! 目ぇっ! 笑ってないからっ!」
相変わらず沸点が低くて怖い。
半ば乱暴に手を離し、ローテーブルの片づけを始める恋人を見てちょっと調子に乗りすぎたかと、反省する。
デザート皿に盛られた苺に練乳をたっぷりと投入しフォークの腹で潰していると、宮地が信じられないものを見たと言わんばかりの表情でそれを見つめていた。
「随分変わった食い方すんな」
「そうっすか? うちではコレが普通なんだけど」
「潰すと味が混ざんだろ」
「ぶはっ、苺ミルクなんだから混ざんないでどうするんっすか。綺麗に潰すのって結構難しいんっすよ。硬めの苺があると力入れなくちゃいけないんで……ぅわっ!?」
「!?」
しゃべりながら潰していると、うっかり手が滑ってしまった。
あっ! と思った時には既に遅く高尾の膝に皿が落ちた後。
「すんませんっ! すぐに拭きます」
「いいって、お前は動くな。その姿でうろうろされると余計に汚れる!」
「う、……マジですんません」
改めて自分の姿を見てみれば、太ももの辺りから薄いピンクの混じった白い練乳が広範囲に広がっていた。
幸い、床やソファには飛び散っていないようでホッと胸を撫で下ろす。
だが、濡れたタオルを持ってきて、自分の目の前で跪く宮地を見ているととてつもない罪悪感に襲われる。
「あ、あのっオレ自分で出来るんで……」
「うるせぇな。俺がやりたいんだから口出しすんな」
「……っ」
そう言いながら腿にひやりとした手が触れてどきりとした。


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