No title

風呂から上がると、珍しく宮地がキッチンに立っていた。
「宮地さん、お風呂あがりました。つか、来た時からずっと気になってたんっすけど、どうしたんっすか、そのイチゴ」
ミニキッチンの脇に箱積みされた大量のイチゴと、珍しすぎる恋人の姿を見比べて尋ねてみれば、よくぞ聞いてくれましたとばかりに盛大な溜息を吐く。
「木村に貰った。つか、押し付けられた」
「ブフッ、押しつけって、宮地さん」
「この間いきなり家に来やがってさ、何かと思ったら、苺が大量に余って困ってるからやるっつって、勝手に置いていきやがった。一人じゃ食いこなせねぇから、お前も手伝え!」
流石八百屋さんの息子! そう言えば去年も様々な果物や野菜達が腐るともったいないからと言う理由で部室に運び込まれていたのを思い出した。
「……それは別にいいっすけど、イチゴジャムとかしたほうが早いんじゃ?」
思わずブルーのエプロンをつけてせっせとジャムを煮詰める宮地の姿を想像してしまい、噴き出しそうになった。
はっきり言って似合わない、似合わないけど、その姿は結構面白そうだ。
「てめぇ、俺がイチゴジャム作るようなタマに見えんのか? 大坪じゃあるまいし」
変な事考えんな! 轢くぞと、いつもの調子でいいながら怖い笑顔を向けられて、高尾はぶるぶると首を振った。
「とにかく、食うぞ」
「へーい。あ、宮地さん練乳あります?」
適当に皿を用意しながら尋ねると、すぐさま「そういやなんか、木村が一緒に置いてったな冷蔵庫にあるんじゃね?」と、言う返事が戻って来る。
「ぶはっ、木村さん用意周到じゃないっすか」
「つか、苺なんてそのまま食えばいいだろうが。面倒くせぇ」
「おいしいっすよ、苺ミルク。あんま甘いの好きじゃないけど、それだけはイケんですよね俺」
「ふぅん……そういうもんか?」
「そういうもんです」
宮地が切ったものを隣に並んで皿に分けながら思わず笑みが零れた。


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