No title

――夢を見た。オレ達がまだ中坊で、一勝する為に必死こいてひたすら練習を続けていたあの頃の夢。

日向は才能に恵まれた選手だった。なのに、仲間に恵まれてなくて。

部活が終わった後も、二人で遅くまで残って自主練してたのを今でも覚えている。

とにかく日向を勝たせてやりたかった。アイツの足を引っ張ってたのはオレ達だ。実力が足りないなんて、なんの言い訳にもならない。

今になって思えば、あんときのオレ達は個々の能力値が低かったんだ。

オレも含めて全員が日向のレベルについて行けなかった。

もしも中学時代、一度でも試合に勝つ事が出来ていたら……日向が金色に髪を染める事も、似合わない長髪にしてしまうことも回避出来た筈だ。

アイツを更生させたのがオレじゃなくて、木吉だって言うのが何となく悔しい。

オレの方がずっと日向を見てきた。なのに今、アイツの隣には木吉がいる。

どうして、オレじゃないんだ? どうして……。

オレの力が足りないのはわかってる。オレじゃ日向を更生させる事は無理だっただろうし、アイツに初勝利をプレゼントしてやることも叶わなかっただろう。

高校に入学して初めて試合で勝てた時の日向の笑顔。アレは多分一生忘れる事は出来ないと思う。


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