No title

身動きが取れなくなるほどの人ごみの中、高尾は人生最大のピンチに陥っていた。

電車の揺れに合わせて身体を弄る手の感触。ズボンの上から探るように長い指が這い回り、下半身の形を確かめるように強くなぞり上げていく。

「――声は上げんなよ。声出したら線路に突き落してやる」

「……っ」

耳元で囁かれる声が熱い。ゾクリとしながらきつい視線を後ろに向ける。なんとか手を止めてもらいたいけれど、鮨詰め状態の車内では身体の向きを変える事すら容易ではない。

(マジ冗談きつい……)

ただでさえ休日返上の練習試合で疲れていると言うのに、その上痴漢の真似事をされるなんて堪ったもんじゃない。

目の前には相棒の緑間真太郎。少し離れた所に大坪や木村が立っているのが見える。

そして自分の背後にぴったりとくっついているのは、こんな悪戯を仕掛けている張本人、宮地清志だ。

目で訴えてみても宮地は喉で笑うだけで止めてくれる気配は無い。

「さっきから黙ったままだが、どうかしたのか?」

「……あ、ははっ、なんでもねぇって。ほんっと、満員電車ってツレーよな。真ちゃん達は頭一個分デカいから気になんないと思うけど……っ、息苦しいっつーか……」

ふと気が付くと緑間が不思議そうな顔をしてジッとこちらを見ていた。当たり障りのない返答をしながら、高尾は必死に平静を装うとする。緑間にだけは自分が今置かれている状況を悟られたくない。

なのに宮地の手は容赦なく高尾の身体を弄り続けていく。

少しでも周囲の邪魔にならないようにと胸に抱えたスポーツバックの下で、宮地の左手がズボンの中に潜りこんでいる。性器を包み込み揉みしだくように動かされると、下着越しでも指の感触がわかってしまい、その巧みな動きに身体が否応なく反応してしまう。

心臓が痛い位に鳴っていた。右手がシャツの裾から潜りこんできて、いやらしい動きで臍の辺りを撫で回す。指先だけのもどかしい刺激に腰が揺れ、声を上げそうになって堪らず唇を噛んで耐えた。

耳元で宮地が微かに喉で笑う声がして、真っ赤になって睨みつけるとすかさず股間を弄っていた手が下着の中に潜りこんでくる。先走りの蜜を滴らせ始めたソレを握り込まれ思わず身体が小さく跳ねた。


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