No title
「……俺は落ち着かないです」
「ヤラシイこと考えるから?」
「なっ、ちが――っ」
艶を含んだ声で囁かれ反論しようとしたら、頬に長い指先が触れた。くいと顎を持ち上げ上向かされて視界いっぱいに宮地のアップが迫りするりと唇を寄せてくる。
「――あ……」
ドキッとして思わずぎゅっと目を瞑った。だが、いくら待っても予想した事が起こらずにそっと目を開けてみると、宮地の面白そうな顔が目の前にあった。
どうやらからかわれていたらしい。
「宮地さんヒデーっ! サイアクっ」
キスを待ってるみたいに目を閉じてしまった自分が恥ずかしいのと、はめられたようで腹が立つのとで、やり場のない思いがぐるぐると渦を巻き体温が一気に上昇していく。
「キスすると思ったか?」
ククッと肩を震わせながら笑われて、カァッと頬が熱くなった。
「ち、違っ!」
「ふぅん、じゃぁ何を期待していたんだ?」
耳に吐息を吹き込むようなねっとりとした囁きに、身体がぶるっと震える。
「……っ」
「言いたくないなら当ててやろうか?」
宮地の鋭い瞳の奥に、蠱惑的な光が宿りどきりとさせられる。この琥珀色の瞳に真っ直ぐ見つめられると、何処までも自分を曝け出してしまいそうになる。
「もう……いい。ムカつくっ」
「ふぅん?」
いつまでも宮地のペースに乗せられているのが悔しくて、身体を反転させると宮地の胸元を掴んだ。ぐいっと引き寄せ、ほんの少し背伸びをしてその形のいい唇に自分からキスを仕掛ける。
「……んっ」
ちゅ、ちゅっと軽いリップ音が響き何度か唇を触れ合わせていると宮地が少し屈んでくれた。腰を抱いたまま背を塀に押しつけるようにして熱い舌が口腔内に潜り込んでくる。
「ぅ、ん……ふっ、……あっ」
宮地はキスが上手い。舌だけでなく歯茎や頬の内側など、今まで知らなかった性感帯をどんどん浮かび上がらせていく。
キスに夢中になっていると不意に宮地の掌がシャツの中に潜り込んできた。