No title
「よぉ、久しぶりだな二人とも」
爽やかな笑顔で手を振るのは、元キャプテンの大坪だった。
「俺も忘れんなよ。ほら、差し入れ」
「大坪さんと、木村さんじゃないっすか! お久しぶりっす! どーしたんっすか?」
ぐいと押し付けられたフルーツの盛り合わせを受け取り、懐かしい顔ぶれを見渡す。大坪はあまり変わってないように見えたが、木村は髪が伸びていてすっかり別人のようだ。
「ぶっは! 木村さんが坊主じゃない! ぶっくくっ」
「何笑ってんだよ高尾てめぇ!」
「だって、木村さんの髪が……、ププッ、痛いっ、いてぇって! すんませ、マジ、パイナップルでグリグリすんの勘弁してください!」
ヘッドロックをかけられ、パイナップルの棘で頭をグリグリと押され目尻に涙が浮かんだ。一年間共に戦った先輩の攻撃は容赦ない。
「――宮地さんは、一緒じゃないんですか?」
「!」
じゃれつく二人を見つめながら、そう口を開いたのは緑間だった。
「あ〜、宮地はなんか、先生に挨拶行くって職員室の方に行ったぞ」
「……」
そうか、宮地さんも来てるんだ……。
そう思うと、急に胸がドキドキしてきた。
「でも、直ぐに行かなきゃならない用があるとかでこっちには寄らないって言っていたな」
「えっ!?」
「冷たいヤツだよな。アイツも……たまには顔見せてやればいいのに」
木村の言葉にいささかショックを受けた。
せっかく来たのに、もう帰ってしまうなんて!
職員室にいるのなら今から走ればもしかしたら間に合うかもしれない。
「すみません、木村さん大坪さん! 失礼します!」
「高尾っ!?」
二人へぺこりりと頭を下げると、挨拶もそこそこに体育館を飛び出していた。