No title

連れて来られたのは、体育館の裏 湿気を帯びた生温い風が頬を撫でる。

このままだとじきに雨になるだろう。

「で、なんだよ話って?」

「……」

緑間は何も言わなかった。ただ、視線を彷徨わせ大きな体をそわそわとさせている。

「真ちゃん。話、ねぇの?」

「……っ」

不思議に思って見上げると、目が合った。すると途端に緑間の顔がぶわっと赤くなってゆく。

「えっ、えっ? ちょ、なにその反応!?」

戸惑う高尾を前にようやく意を決したのか緑間は深呼吸を一つしてから一言。

「お前が好きだ」

そう、告げられた。

「――――」

ザァッと木々がざわめき、緑間の言葉が頭の中に染み込んでくる。

「ア、アハハハッ! なに言っちゃってんの真ちゃん! 新手のジョーク? マジうけんだけど」

「冗談などではない。俺は本気なのだよ」

「……ッ」

バンバンと肩を叩き、笑い飛ばそうとした高尾の顔が強張る。

「マジで?」

「あぁ」

「冗談とかじゃなく?」

「俺はこんな恥ずかしいジョークは言わん!」

「だよな〜……って、マジなのか!?」

「だからさっきからそう言っているだろう!」

顔を真っ赤にして怒る緑間はとても冗談を言っているようには見えない。

「――は……」

相棒からの突然の告白を受け、高尾の顔に自嘲的な笑みが浮かんだ。

「もしかして、同情してくれてんの? 宮地さんと別れたオレが可愛そうになって」

「違う! そうじゃないのだよ!」

「だったら、なんでだよ? わっかんねぇよ。オレ、真ちゃんが好きになってくれる要素なんてねぇだろ。だって真ちゃん好きなタイプは年上の女性だって言ってたじゃねぇか」

「それはタイプだと言うだけの話だろう」

「!」

スッと頬に手が伸びてきて、顎を持ち上げられた。

切なげな瞳に見つめられ、思わず息をむ。

「宮地さんの件が全く関係ないと言ったら嘘になる……。俺は、毎日お前を見てきた。先輩たちが引退した辺りからお前はずっと無理に笑顔を作っていただろう。辛そうな顔をしているのに無理して笑っているお前を黙って見ているのはもう、耐えられないのだよ」

グイと引き寄せられ、大きな広い胸に抱き込められた。

緑間の服から香る百合の香りに不覚にもドキリとさせられてしまう。

「お前にそんな顔をさせるあの人の事が何度憎いと思ったことか……」

ギリッと音がしそうなほど唇を噛みしめ、強く抱きしめられれば息苦しさが先に立つ。


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