No title
「いいのか、追いかけないで……」
懸命に涙を堪えていると宮地とは入れ違いで緑間が入ってきた。一体何処から会話を聞いていたのかはわからないが複雑な表情をして高尾を見下ろしている。
「いい。……わかってた事だったし……つーか、立ち聞き? 趣味悪いんじゃね、真ちゃん」
「強がりを言うな高尾。お前の顔に、宮地さんと離れたくないと書いてあるのだよ」
「……ッ」
腕を引き、緑間の懐深く抱き込まれる。一瞬何が起こったのかわからずに身じろいだものの優しい感触に、溜め込んでいた感情が堰を切って溢れだした。
「……しょうがねぇじゃん。もともとそう言う約束だったんだし……オレ、宮地さんに迷惑かけたくないから……っ!」
宮地が卒業したら二人の関係は終わる。それは最初からわかっていた事だ。
宮地の本心がわからない以上、延長してくださいなんて、ムシのいい事言えるはずがない。
とめどなく流れる涙を緑間の胸に顔を押し付けて拭う。
「ごめっ……真ちゃん……今だけ……こうしてて……」
直ぐにいつもの自分に戻るから、今だけは――。
「……」
緑間は何も言わなかった。ただ、黙ったまま高尾が落ち着くまで背中を擦っていた。