No title
『……いや。ちょっと気になっただけだ」
「宮地さん?」
『で、どうなんだよ?』
「仲は今までどうりっす。つか、全然変わってねぇし」
『……そうか』
それっきり、宮地は何も言わない。若干の不機嫌さが滲んでいたような気がしたが、真意はわからず。
久しぶりに話せたのに機嫌を損ねるのもどうかと思い、高尾もそれ以上追及することは無かった。
『じゃぁ、俺明日早いし、そろそろ……』
「――あの、宮地さん」
電話の向こうで切る気配がしたので、慌てて声を掛けた。
「明日、本命の試験っしょ? ……頑張ってください」
『……なに、オマエ。覚えてたのかよ』
「もちろん。一度聞いたことは忘れないんで」
最後に会った日、試験日を教えてもらい直ぐにカレンダーに丸を付けた。
自分には応援してやることしか出来ない。
本当は、ずっと側にいて欲しいけれどそれは叶わぬ願いだから。
『……敵わねぇな……』
小さな苦笑と共に独り言のように宮地が呟いた。
「合格したらなんか奢ってください」
『ざけんなてめぇ! 普通逆だろうが。お前が奢れ!』
そんな会話を少しして、電話は切られた。
高尾は名残惜しそうに携帯を眺め、画面の照明が完全に消えるのを確認してから閉じた。
そして――。