No title

『いやらしいな、オレの服を着てなにをしているのだよ』

耳元でそんな冷ややかな声が聞こえてきそうだ。頭がくらくらする。

こんな所、だからだろうか? いつも以上に興奮して息が上がる。

イケナイことをしている。と言う自覚がある分身体の反応が早い。

「ん……っ、真ちゃん……、真ちゃん……っ」

動くたびに鼻腔を擽る真ちゃんの香りに気分が高揚していき、自然と手の動きも早くなっていく。

トロトロと溢れた体液が自分の手を濡らしくちゃくちゃといやらしい音を響かせ、静かな室内に木霊する。

「ぁ……は……っ」

あっ、やばっ、イキそうかも。そう思った矢先――部室のドアがいきなりカチャリと開いた。

「――なに、してんだ? オマエ……」

やべっ! と、思って咄嗟に前を隠しはしたけれど……。時すでに遅し。

宮地さんの目がすぅっと細められる。

「……それ、緑間のユニフォームだろ? 試合でもないのになんでオマエが着てんの?」

「……っ」

その質問に答えられるはずなんてない。

背中を冷たい汗が流れ、沸騰していた頭の芯がスーっと冷めて行くのを感じた。

「高尾って、そんな趣味があったんだな」

「い、いやあのっ……これは違っ」

「違う? なにが違うんだよ。緑間のユニフォーム着て、そんないやらしい顔して……此処でナニしてたんだ?」

この状況じゃ、なにを言ったって無駄っていうもの。

「あの、この事はし……緑間には言わないでくれませんか?」

「いいけど。別に」

うなだれる俺の頭上に響く優しい声。助かった、と思って顔を上げた矢先、宮地さんはにっこりと笑って言った。

「代わりに、俺のいう事なんでも聞くって約束しろ。そしたら緑間には言わないでおいてやる」

その時の宮地さんの顔、俺は多分忘れない。

顔はにっこりと笑っているけれど、何処か冷酷さを帯びた瞳はギラギラとしていてそのアンバランスさが不気味だった


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