No title

宮地達が居なくなった時の事を考えると、怖くて仕方がないと言ったら緑間はなんと思うだろうか?

何処のチームにも下級生にレギュラーの座を奪われてよく思わない輩はいる。今でこそ宮地が威嚇してくれているからいいものを、彼が居なくなった後またあんな目に遭うんじゃないかと思うと本当は恐ろしい。

宮地は、自分のスキルを向上させろと言ったが、まだそれが達成できているとは到底思えない。もっとレベルを上げなければ。

頭で色々考えているうちにすっと手が伸びてきて、テーピングで保護された指先が頬に触れた。そっと顎のラインを撫でるように辿りくいと上向かされる。

何事だろうと不思議に思っていると、切なげな瞳とぶつかった。

「冷たいな」

「そりゃ、ま〜汗かいてるし……」

「高尾、お前は最近……」

頬を撫でながらそう呟くとそれっきり緑間は何も言わず、口を閉ざしてしまった。何か言いたげにニ、三度口を開きかけたが直ぐに噤んでしまう。

「真、ちゃん……? オレが最近なに? どうかしたのかよ」

いつもと様子の違う緑間に高尾は戸惑うばかりだ。

「なんでもないのだよ。早く着替えろ。風邪をひいたら面倒なのだよ」

「え〜っ! なんだよソレ! 気になるじゃねぇか!」

「気にするな。大したことではないのだよ」

「大したことないなら教えろって! このままじゃ気になって眠れねぇじゃん」

ふいと視線を逸らしてしまった緑間の横顔はどんな表情をしているのか。何を言いかけたのか気になって身を乗り出して彼にしがみ付いたその時。

「……こんな時間に何してんだ?」

空気を裂くような冷たい声が響き渡り、心臓が飛び出すんじゃないかと言うほど驚いた。声がする方に視線を向けると、そこにいたのは――。

「み、宮地さん! えっ、なんで?」

帰ったんじゃなかったのか?

緑間にくっついたまま思わず固まる。

「俺がいると都合の悪い事でもあるのかよ」

「え?いや、そういうわけじゃないっすけど」

不穏な空気に居心地の悪さを感じ視線を彷徨わせていると、緑間が深く息を吐いた。

「……先に帰るのだよ」

「え? あっ、ちょ、真ちゃん!」

ジャージを羽織り、とばっちりを食らうのはごめんだとばかりに、緑間はさっさと体育館を出て行ってしまう。


[prev next]

[bkm] [表紙]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -