No title

――伊月に見せたいものがあるんだ。そうメールが入っていたのは昨日の夜遅く。

丁度連休中で部活も休みだからと朝一番に日向の家に来た。

珍しく機嫌がいい日向に理由を聞いてみたら、なんでも凄いレアなフィギュアが手に入ったらしく、自慢げに一体の人形を持ってきた。

オレは戦国武将の事についてほとんどよく知らないけれど、伊達正宗の名前くらいは知っている。

なんでもマニアの間ではレアでプレミアまでついているものらしい。

ようやく手に入れたと語る日向は本当に嬉しそうで、自慢したがるところがガキっぽいよなって、思った。

この時までは、本当に普通だった。

でも……。

オレがそのフィギュアを棚に仕舞おうとした時、暖房器具のコードに引っ掛かってうっかりそれを落としてしまったんだ。

思えばアレが、日向を本気で怒らせた最大の原因――。

謝っても許してくれなくて、ゾッとするような暗い笑みを浮かべた日向がオレの頬を撫でる。

「――しつけのなってないお前には調教が必要みたいだな」

酷くねっとりとした声で、日向が耳元で囁いた。

「調教って、悪い冗談はよせよ!」

不穏な言葉に息をのみ頬が引き攣る。嫌な予感がして逃げようとしたけれど、肘を掴まれ同時に足を払われて、ベッドに勢いよく押し倒された。


そして、現在に至る。

確かに落としたオレが悪いけど、でも……いくらなんでもコレは。

やり過ぎだろ!?


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