No title
「……随分手馴れてんな」
「そりゃ、妹がいるし……オレ自身小さいころはよく風邪ひいて姉さん達に世話してもらってたから。バスケ始めてからはだいぶ丈夫になったけどさ」
湯で絞ったタオルで上半身を手早く拭いていく。
日向はふぅんと呟いてされるがまま伊月に身を任せている。
「あ〜、すげぇ気持ちいい」
うっとりと呟くと、不意に伊月がその手を止めた。
「どうした?」
「……っ、後は出来るだろ? 自分でしろよ」
「なんだ、全部してくれないのか」
「ぜ、全部って……だって……」
顔をこれでもかと言うほど真っ赤に染めてモジモジする伊月を見て日向はにやりと口角を上げた。
「身体が怠くて動けないのわかっててそういう事言うのか、伊月は」
「うっ。でも……」
「ただ身体拭くだけだろ。なにやらしい想像してんだ」
「べ、別に変な想像なんてしてないからな!」
ふいっとそっぽを向いてしまう伊月が可愛くて、日向の表情が思わず綻ぶ。
「じゃぁしてくれんだろ? 身体拭くだけなんだから」
「……ッ」
仕方なく伊月は日向のズボンと下着を足から抜くと跪いて足の先から手早く拭き始めた。
大丈夫、ただ拭いてやってるだけなんだから。と、わけのわからない言い訳を心の中で繰り返し太腿を拭いていると、熱い指先が伊月の髪を撫でた。