No title
暇を持て余し、炬燵に足を入れたままテレビを見ていると、しばらくしてベッドの軋む音がした。
「伊月?」
「起きたみたいだな。お粥食べるか? 少しでも食べないと……」
アイスノンに触れると、だいぶ温くなっていた。熱を吸い取ってくれたのか先ほどよりもずっと顔色がよくなっている。
「腹減ってねぇ」
「ダメだ。早く良くなってくれないと困るんだからな。オレが食べさせてやるから」
「口移しでか?」
「ばっ、違うよ!」
赤くなった頬を悟られないようそっぽを向いて、アイスノンを持ってキッチンへと降りた。
湯気の立つお粥をお皿に盛りつけ新しいアイスノンと一緒に日向の元へと持っていく。
「ほら、あーんして」
「……」
スプーンで掬って口元へ持って行ったが日向は口を開けない。
「食欲ないのはわかるけどさ、少しくらい食べろって」
「俺はガキじゃないっつーの! 高校生にもなって“あーん”はねぇよ!」
頬を赤らめて日向が抗議する。
「いいから食えよ。そんな小さなことに拘るなんて男らしくない」
「小さくねぇよ! 大事な事だ」
「……はいはい。わかったよ“あーんして”って言うのは止めるから口開けろって」
大した違いは無いと思うのだけれど、変なところで日向は頑固だ。
渋々と口を開けた彼の口にスプーンを運ぶ。
「味付けどう?」
胃に優しいように薄味にしたから物足りないかもしれない。
「ん、悪くねぇよ。普通に食える」
「そっか……よかった」
不味いと言われなくてホッとした。
「リンゴもいたんだけど食べれそうか?」
「お〜、サンキュ。色々悪いな」
「具合悪いから仕方ないよ。食べたら身体拭いてやるから。汗かいて気持ち悪いだろ」
綺麗に平らげて空になった器をキッチンへと置きに行き、その足で湯を張った洗面器とタオルを持って戻ってくる。