No title
「日向、大丈夫か?」
声を掛けると、日向はうっすらと目を開けた。熱が高い所為で何処か瞳が潤んで見える。
「悪いな、伊月。遊びに来てくれたのに……」
「何言ってんだよ。熱があるんだからそんな事気にしなくていい」
珍しくしおらしい言葉を発する彼に苦笑しながら、おでこに当てたヒエピタを取り替えた。
久々にオフの日曜日。電話しても出ない彼が気になって家まで行ったら、なんと日向は寝込んでしまっていた。
しかも、両親は早朝に用事で出て行ったきり夜遅くにしか戻らないと言う。
「具合悪いときはお互い様だろ。ほら、薬飲んで寝とけよ。起きれるか?」
枕元薬と水を用意して覗き込むと何を思ったか日向がにやりと笑った。
「口移しで飲ませろよ」
「はぁ? 何馬鹿な事言ってんだ」
カァッと頬が赤くなる。
「怠くて、起き上がれないんだよ……」
「……っ」
乾いて色を無くした唇を見やる。確かに、高熱ではある。起き上がれないと言うのは本当かもしれない。
自分だって、高い熱を出したときは支えて貰いながら無理やり起こされた経験がある。
暫く逡巡したのち、意を決して錠剤を日向の口に入れると水を自分の口に含んだ。
大丈夫、薬を飲ませるだけだから。跳ねまわる鼓動を日向に悟られるのではないかと心配になりつつ、ゆっくりと顔を近づけていく。目を瞑って横たわっている日向を間近で見ると自分からキスを迫っているような気分になり言いようのない羞恥心がぶわっと湧き起こった。
「〜〜っ」
だが、あと数センチで唇に触れると言うのにそこから先が進まない。
焦れた日向が燃えるような腕で伊月を強引に引き寄せ唇を触れ合わせ、水を流し込む。
「んっ、……ん? ん……ふっ」
ごくりと嚥下したのを確認し、唇を離そうと思ったら頭を押さえつけられてそのまま熱い舌が絡みついてきた。
逃げる舌を弄られ口腔内を舌で蹂躙される。
「あ、ふ……っ」
「ごちそーさん」
「……馬鹿っめちゃめちゃ元気じゃないかっ!」
真っ赤になって睨みつけると、日向はにやりと口元を歪ませた。