No title

「ぶはっ! ちょ、ちょっ、ちょ! いきなり何言いだすんっすか!? つか、マジで? えっ、彼氏って、ちょ、えええっ!?」

「落ち着け。だから、フリだけだ。俺と付き合ってるって事にしときゃ、その間はさっきみたいなバカに絡まれることも無くなるだろ。部内で俺に逆らおうとするやつなんざ数えるほどしかいねぇからな」

宮地が自分にも他人にも厳しいのは周知の事実。今の一,二年は勿論だが、三年にも彼を恐れている奴はたくさんいると聞く。

「期間は俺が卒業するまでだ。それまでにお前は周りを納得させるだけのスキルを身につけろ。誰にも文句言わせねぇくらい上手くなれば、俺がいなくなった後でも自分の身くらい守れるようになるだろ。それまでは、俺が守ってやるから……」

「ハハッ、なんか今すっげーハードル高い事言われた気がするんすけど」

「当たり前だ馬鹿! アイツに襲われたって事はそれだけお前が見くびられてるって事だろうが。単純にお前のレベルが低すぎんだよ! だからバカに付け込まれんだ」

「……」

そこまで言われてしまえば返す言葉が見つからない。

実力不足は自分が一番わかっている。

「やっぱキツいっすね。宮地さんは……」

「あ? だって事実だろ」

「ハハッ」

で、どうするんだ? と、尋ねられて言葉に詰まる。

不安はあるが、また誰かに襲われるかもしれない恐怖に比べたら、宮地の申し出を受けるのがいいように思えた。

「じゃぁ……お願いします」

頭を下げると、宮地の掌がくしゃりと髪を撫でた。

子ども扱いされているような気がして見上げると、満足そうに笑みを浮かべる宮地がいて、何も言えなくなる。

「そろそろ行くぞ。和成」

いきなり名前で呼ばれて、妙な気恥ずかしさに襲われた。

「……っ! 宮地さん、いきなりそれはハードル高いっす」

「なに照れてんだよバーカ」

クックッと肩を震わせながら肩を抱く宮地はどことなく楽しそうだ。

なんだか妙なことになってしまった。と、高尾はひっそりと溜息を吐いた。


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