No title
かなり遅めの昼食を終え、午後は水族館を見て回った。
高校生にもなって水族館なんてと思ったけれど、いざ中に入ってみると様々な工夫がしてあって意外に面白い。
秋の陽はつるべ落としとはよく言ったもので、二人が外に出たときには既に辺りがオレンジ色に染まり始めていた。
楽しいひと時ももう少しで終わってしまう。そう考えるとなんとなく寂しい気分になる。
「何シケた面してんだ」
360度パノラマの展望台から夕日を眺めていると不意に後ろから覆いかぶさるようにして肩に顎がのった。
「いや、今日はあっという間だったなと思って……」
「楽しかったか?」
「はい! すっげー楽しかったっす」
「そうか。そりゃよかった……」
何処かホッとしたような笑みに、トクンと鼓動が跳ねる。
こうしていると、なんだか本物の恋人同士になったみたいだ。
夕日に照らされた宮地の横顔があまりにも綺麗でときめいてしまう。
「おいおい、見惚れてんなよ」
「み、見惚れてねーし!」
「そうか? カッコいいなぁ今すぐ抱いて欲しいなぁって面してんぞ?」
「ち、ちがっ! 俺っ、そんな顔……っ」
するりと腰に腕が回され、顔がカッと熱くなった。
長い指先が顎にかかり首を斜め後ろに傾けさせられて宮地の顔が近づいてくる。高尾は咄嗟に手のひらで宮地の顔を押し返した。
「ちょ、ストップ! なにしようとしてんすか!? まだ人が……」
「何って、こういうところでするもんつったら一つしかないだろ。安心しろよ。今ここにはオレ達しかいない。さっき、他の奴らが降りていくの確認したからな」
一体いつの間に……。
「で、でもダメですって! 今いなくてもいつ人が来るかわかんねぇし……」
顔を横に向けたまま抵抗していると、耳を軽く噛まれた。舌の先で耳の後ろをなぞられて肌が粟立ち、じんと腰が痺れる。宮地は高尾の弱点を熟知していた。耳の後ろや首筋は特に弱くて、触れられると途端に体に力が入らなくなってしまう。
「こっち向けよ」
耳元で囁かれ、色気を含んだ声色が腰にクる。半ば条件反射のように体が熱くなり、下腹部が変化しつつあった。