No title
「宮地さん?」
ポケットに手を突っ込んだまま、動きが止まった宮地に、高尾は首を傾げる。
「あ〜……」
ふいと視線を逸らせた宮地はコホンと咳払いを一つ。
「――明日空けとけよ」
「え……?」
「明日はオフだろ? 遊園地のタダ券が手に入ったんだ」
「……っ」
それって、それって、もしかしてデートのお誘い!?
ぽかんと口を開けたまま、茫然と見上げる高尾の姿に宮地が小さく喉を鳴らした。
「んだよ、馬鹿面すんな」
「バカ面ってひどっ」
「明日、なんも用事ねぇんだろう?」
詳しくはメールすっから。
そう言い残して、頭をひと撫ですると宮地は本格的に行ってしまった。
「明日、遊園地って……っマジで?」
もしかしたら、それを伝えるためにわざわざ教室まで来たのか?
遊園地デートなんて、なんだか本格的な恋人同士みたいじゃないか!
やばい。なんだか凄くドキドキしてきた。
チャイムが鳴ってもしばらくその場から動けないでいる高尾を、緑間が複雑な表情で見つめていた。