No title

「あ〜、も〜お前すげー馬鹿。ケツ風邪ひいた奴なんて見たことねぇっつーの。たく……ヤる気失せちまったわ」

「やっぱヤろうとしてたんっすか」

わかってたけど、なんだかなぁ……。

「……なぁ、高尾」

ホッとして、頬を引き攣らせながらベンチに凭れる俺の頭上で真剣な声がした。

「なんっすか? こんな寒い中でスんの俺嫌っすよ。尻は風邪ひかないかもだけど腹は確実に緩くなりそうだし……」

「ちげーよ馬鹿! その……悪かった」

「え? 何、どーしたんすか!?」

いきなり頭を下げられると、俺はメチャメチャ動揺してしまう。だって、宮地さんが謝るとか有り得ねぇ! なんか悪いもんでも食ったんじゃないかと逆に心配になる。

「お前があんま楽しそうに緑間の話すっから、ついムカついて……。こんなことするつもりじゃ無かったのに」

髪をきあげて、はぁっと宮地さんが盛大な溜息を吐いた。白い靄がぼわっと空に上がってゆく。

「宮地……さん?」

「オレさ、結構マジでお前に惚れてるみたいだわ」

「…………へ?」

今、この人、なんつった?

俺に、なん……だって?

「え、えっ? マジっすか……」

「冗談でんな事言うか馬鹿!」

「で、でも俺、俺?……ぅえええっ!?」

「ぁあもうっ! うるせぇ! 近所迷惑だろうがっ! あんま騒ぐと砂場に埋めっぞ!」

こんなの、いきなりすぎて、どうしようもない。

ビックリしすぎて、心臓が激しくドキドキして今にも壊れてしまいそうだ。

「宮地さんのが声デカいっす」

「――ウルセェ! もう帰るぞ!」

すかさず宮地さんが立ち上がった瞬間、俺はあることに気が付いた。

宮地さんの首筋から耳にかけてが赤く染まっている。

――あの宮地さんが、照れてる?

そう認識した途端、かーっと俺の頬にも血が上った。

「み、宮地さん、あの……」

「んだよ」

「さっきの話……俺……」

「お前が緑間好きな事は知ってる。だから、無理に付き合えとか言うつもりねぇから安心しろよ。でもな……いつか、お前に俺の事が好きだって言わせてやる!」

俺に背を向けたまま、宮地さんは空を見上げ、自信たっぷりにそう言い放った。

「オレがマジになったら、靡かない奴なんていないんだろ?」

魅力的な笑みを浮かべながら、俺の頭をくしゃりと撫でる。

そしてそのまま軽く手を振って公園を出て行ってしまう宮地さんの後姿を俺は呆然と見送った。


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