No title
黄瀬との電話を切ったあと、緑間は眼鏡を押上げディスプレイに高尾の番号を表示させていた。
話の後半は黄瀬と何を話したのか全く覚えていない。
今はとにかく高尾に会いたい。頭の中はそれでいっぱいだった。
『もしもーし、何? 真ちゃん』
「高尾。今すぐ家にくるのだよ」
『はっ? 今から? いいけど、なんで?』
突然の申し出に、高尾は驚愕の声をあげる。
今現在、夜の一〇時前。こんな時間に電話を掛けて来ていきなり来いと言われて驚かない方がどうかしているだろう。
だが、頭が湧いた状態の緑間は時間なんて気にする余裕もないらしい。
「いいから、とにかく来い」
『????』
はやる気持ちを抑えきれない緑間に急かされて、高尾はわけも分からず首を傾げる。
こんな時間のお呼び出しは一体なんなんだ、と。
(ま、真ちゃんからのお誘いなんて珍しいから行ってやるか)
凡人には理解できない何かがあるのだと勝手に解釈をして、高尾はこっそり家を出た。
鼻歌なんて歌いながらチャリを漕いで緑間の家へ向かう彼は自分が今から何をされるのか知る由も無かった。