No title
『緑間っち〜、聞いて欲しいっすよ〜!! 青峰っちが酷いんっす!』
それは、黄瀬涼太から掛かってきた一本の電話から始まった。
開口一番酷いとは、一体何事だと若干の苛立ちを覚えながら携帯に耳を傾ける。
黄瀬はよほど不満が溜まっているのか、青峰っちが〜と同じ言葉を繰り返す。
「全く、青峰が一体なんなのだよ」
『青峰っちが、酷いんっす』
「それはさっき聞いたのだよ。早く要件を言え」
『実は、俺達付き合ってるんっすけど……エッチの時、いっつも俺にいやらしいことばかり言わせようとするんっす!』
「ぶっ! ゲホゲホッ」
突然すぎるカミングアウトに、緑間は飲みかけていたおしるこを盛大に噴き出してしまった。
『ちょっと、大丈夫っすか? 緑間っち』
「な、な……」
あまりにも衝撃的で言葉も出ない。
「い、い、いきなりなにを言い出すのだよっ!」
隠しきれない動揺を誤魔化すように眼鏡を押上げ、誰もいないのについ声のトーンを落としてしまう。
いくら高尾で多少の免疫がついたとは言え、中学時代の同級生からのカミングアウトをあぁそうなのか。と、軽く聞き流すようなスペックは残念ながら緑間に備わってはいない。
自然と赤くなってしまった頬を抑え、何故コイツは自分にこんな電話を寄越したのかと頭が痛くなった。
『それでね、俺超恥ずかしいからやめて欲しいってお願いしたんっす。だけど青峰っちが「お前が恥ずかしがる姿を見るためにやってんだろ? その方が感じてるくせに」って。酷くないっすか!!?』
「……」
酷くないっすか? と、言われてもなんと反応したらいいのかわからない。
だが黄瀬は今まで溜めていたモノを吐き出すかのように二人の関係を赤裸々に語り、緑間を狼狽させた。
「黄瀬。お前の言いたいことは大体わかったのだよ。しかし……なぜそんな話をオレにふるのだ」
今まで、黄瀬はおろかキセキの世代の仲間とこんなぶっちゃけトークをした事は一度もない。
ただ愚痴りたいのなら比較的仲のいい黒子にでも話せばいいものを。
『だって、黒子っちが……「緑間くん最近彼氏が出来たみたいなので、話聞いてくれると思いますよ」って言ってたから』
「!」
犯人はあいつか! とっさに黒子の顔が浮かび、緑間はぎりっと奥歯を噛み締めた。