No title

気が付くと、そこは脱衣所の長いすの上だった。

扇風機が俺に向けて当てられていて、ひんやりとした風がそよそよと気持ちがいい。

近くに真ちゃんの姿はなく、とりあえず下着だけ履かせてくれたのか、下着一枚の格好で横たわっていた。

あ〜ぁ。カッコ悪……俺、何やってんだ。風呂でぶっ倒れるとかマジ最悪。

そう言えば、真ちゃんは何処に行ったんだろう?

どうせ、寝かせるなら部屋で寝かせてくれりゃいいのに。

扇風機の風に当たりながら、徐々にはっきりとしてゆく意識の中でそう思う。

その時、突然脱衣所のドアが開いて真ちゃんが戻ってきた。

「気が付いたか」

「……まぁな」

「すまなかった。まさか、倒れるまで我慢していたとは思わなかったのだよ」

申し訳なさそうに俯く。

そうだ……! 思い出したっ!

「真ちゃんのせいなんだからな!」

「あぁ。反省しているのだよ」

珍しくシュンとして目を伏せる。てか、真ちゃんにそんな顔されたら調子狂うじゃん。

なんと返したらいいのかわからなくて、困惑しているとオデコに冷たい缶を押し当てられた。

ひんやりとした感触に、なんとなくホッとする。

「それにしても、珍しいよな。真ちゃんがあんなことするなんて」

俺の問いに真ちゃんは答えなかった。

「イタズラにしては度が過ぎるよな。あれ、完璧にセクハラだかんな!」

なんであんなことをしたのか? と、問い詰めたら

「不安なのだよ」と、意外な答えが返って来た。

不安?

何が?

それと風呂でセクハラすんのって、どう繋がってるんだ?

「意味わかんねぇし。俺、馬鹿だからわかるように説明してくれよ」

「高尾が、誰かに取られてしまう気がしただけなのだよ。宮地さんは特にお前を気に入っているようだし……」

真ちゃんの意外すぎる答えに俺は絶句してしまった。

宮地さんと、俺が……?

「プッ! あはははっ、有り得ねぇって! 絶対。あははっ真ちゃんどんだけ俺のこと好きなの! 超ウケるっ」

真ちゃんの行動の原因がヤキモチだとわかったら、怒りは急に愛らしさに変わってしまう。



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