No title
それからしばらく、俺は伊月さんたちとのんびり談笑していた。他の学校の先輩と一緒に風呂に入るなんて滅多に出来ない事だから、せっかくだし交流を深めておこうかな、みたいな? 気軽な感覚だった。
「伊月さんって面白いっすね! スゲーなにその豊富なネタ! もっと聞かせて欲しいなぁ」
なんて話をして盛り上がっているとふと、太ももの辺りに違和感を感じた。
最初は、チョン、チョン、と触れるだけ。でも次第に手の感覚がはっきりとかるようにさわさわと撫でられて、ギョッとした。
横を見ると、真ちゃんが俺を怖い顔をしてジッと見つめている。目が悪いから実際俺が見えているのかは定かではないが、睨んでいるのは確かだと思う。
だから、触ってる犯人は真ちゃんだってすぐにわかった。
だって、有り得ねぇだろ?
誠凛の先輩達が俺の腿を触るとか意味がわかんねぇし。
何かあるのか? とは思ったけど、真ちゃんが何も言ってこないから俺は気にせず話を続けていた。
ところが。太ももを触っていた筈の手が、だんだんと中心に伸びてきて俺の大事な部分に触れた。
「……!!」
「どうかしたのか?」
「な、なんでもないっす! あは、あはははっ」
ゆるゆると刺激を与えられて、身体が強張る。
不思議そうな面をしている伊月さん達に向けて愛想笑いをしてみたが、ユルユルと扱かれるたびにヤバイくらい声が洩れそうになった。
「ちょっ、真ちゃんなにしてんだよ! こんな所でっ!」
こっそり耳打ちしても真ちゃんは答えない。
水面から見えるんじゃないかって思うと頭が沸騰しそうになる。
「高尾、お前顔真っ赤だぞ? そろそろ上がったほうがいいんじゃないのか?」
「……や、大丈夫っす。俺、長湯が好きなんで……先、上がっていいっすよ」
「そうか?」
俺はコクコク頷いた。
つか、この人まともだと思ってたけど、まさかのダジャレ好きとか。
伊月先輩はひとしきりダジャレについて熱く語ったあと、満足そうに風呂から出て行ってしまった。
ホッとしたけれど俺の受難が去ったわけではない。まだ、浴槽内には誠凛のキャプテンやでっかい7番の人――木吉さん、だっけ? やら数人の人が中に入っていて俺の鼓動は激しく脈打っている。