No title
「――――」
引き合うみたいに唇を重ね、柔らかく濡れた舌先が薄く開いた隙間から強引に割り込んできた。
熱い舌が歯列をなぞり、舌が絡め取られると身体の芯が震え、何とも言えない熱いものが込み上げて来る。
「ん……っ」
蠢く舌から吸い取られるように身体の力が抜けていく。口腔内を蹂躙する舌の動きに煽られてゾクゾクするような甘い痺れが沸き起こる。
こんな扇情的なキスされたら俺……っ。
深く差し入れられた舌が、ぐるりと口腔内を舐めた。
「あ……ふ……っ」
息もできないくらいの濃厚なキスに浸っていると、そこへ賑やかな話し声が響いてきた。それと同時に浴室のドアがガラリと開く。
「っ!」
ヤベッ! と思った瞬間、密着していた真ちゃんの身体をバッと押しのけて距離をとっていた。
恐るべし俺の反射神経。
「なんだ、先客がいたのか」
呑気な声の主は、誠凛のキャプテンのものだった。それに続いて伊月さんと、他数名が入ってくる。
どうやら、俺たちがイチャイチャしていた事は気付いていないらしい。
ちょっとホッとして隣に目をやれば、不愉快そうに眉間にシワを寄せる真ちゃんの姿。
「上がるのだよ高尾」
ザバッと大きな音と共に真ちゃんが立ち上がる。
やっぱりそう来るか。予想どおり過ぎて笑えてくる。
でも……。
「悪い、真ちゃん。俺もうちょいココにいるから先上がってていいぜ」
のっぴきならない事情があって、上がるに上がれない状態になっちゃってんだよな。
湯船に凭れて息を吐く。すると、何を思ったのか真ちゃんは再び俺の隣に腰を下ろした。
「別に先に上がってりゃよかったのに。お前、人ごみ嫌いって言ってただろ。無理すんなよ」
「無理などしていない。一人で先に上がってもつまらんと思っただけなのだよ」
「へへっ、なんだよそれ。小学生の連れションじゃねぇんだから」
真ちゃんってたまにガキみたいなこと言うよな〜。なんて、考えていたらシャワーを済ませた誠凛さん御一行が湯船に入ってくる。
「一緒にいいか?」
「どうぞどうぞ。つーか、これもなんかの縁なんだし仲良くしましょうよ。俺、前から一度伊月さんと話がしてみたいって思ってたんっすよ。似たようなモン持ってるっしょ?」
「え? 俺と? そうか……」
同じ風呂に入るのに、ただ黙って俯いているだけじゃ色々怪しまれると思って、肩に腕を回して話しかけると、伊月さんはまんざらでもなさそうに表情を緩めた。