No title
「なぁ真ちゃん。真ちゃんはどんなこと想像しながらヌくわけ?」
「知らん」
「AVとか観る派? それともえっちぃ漫画とか? つーか、真ちゃんが女の子見て興奮してたら俺、きっと妬くだろうな」
「安心しろ。それは絶対ないのだよ。どこぞの女よりお前の事を想像していたほうがよっぽど興奮するのだからな」
「プッ! 何それ。つまり、真ちゃんのオカズって俺ってことじゃん」
「……っ」
しまった。どうもコイツと話していると調子が狂う。言わなくてもいい事を言ってしまい、思わず眼鏡を押し上げた。
「でもさぁ、俺をオカズにするくらいなら、今ここでヤった方がスッキリするんじゃね?」
「全く、お前は何も分かっていないのだよ」
「何が?」
あまりの馬鹿さに深い溜息が洩れた。本当にこいつの頭にはそれしかないのだろうか?
「ここは学校なのだよ」
「うん、それは知ってる」
「もし、誰かに見られたらどうする。こんな事が原因で試合出場停止などになったら目も当てられん」
「……そりゃ、まぁ確かに……」
「それに、校内での不純異性交遊は禁止されているのだよ」
「ふ、不純……ぶっ、くく、あははははっ!」
人が真面目に話をしていると言うのに高尾はいきなり盛大に噴き出してゲラゲラと笑い出した。
「どこが可笑しい!?」
「お、おかしいに決まってんだろ! ふ、不純異性交遊とか……くくくっ真ちゃん古くさ過ぎ……アハハハっ」
イマドキそれはないわ〜と、目尻に涙を滲ませて大笑いする高尾に些かムッとする。
「とにかく、そう言う事情があるからダメなのだよ」
「ん〜、真ちゃんの言いたいことは大体わかった。けどさぁ、やっぱ俺は、真ちゃんとシたいんだけどな」
腕が伸びてきてジャージの胸元を掴まれた。強い力で引かれ前屈みになった俺の唇に、高尾のそれが重なる。
ちゅっと軽い水音を立ててそれは直ぐに離れ、視界いっぱいに悪戯っぽい笑みを浮かべた高尾の顔が広がる。
「マジで、抱いてよ真ちゃん」
熱い吐息混じりの声に囁かれ、ドクン、と心臓が大きく高鳴った。
前髪をかき上げる仕草や、熱っぽい視線に充てられて軽い目眩を覚える。
喉が異常に乾いて、息が詰まった。
「高、尾。お前……」
「俺、今すごく、真ちゃんとシてぇの」
しっとりと濡れた唇に目がいって、ごくりと生唾を呑み込んだ。
自分の声がが擦れている。 ふつふつと熱が全身を包んでいく。
一瞬、何もかも忘れて本能の赴くままに押し倒してしまいたい衝動に駆られたが、部室棟の廊下を誰かが歩く足音でハッと我に返った。
ギリギリ残った理性でなんとかその欲望を抑え、気持ちを落ち着けるために眼鏡を押し上げる。
「……馬鹿なことを言ってないで帰るぞ」
首にするりと回された腕を外し、高尾に背を向けた。
「ちぇっ、……わかったよ」
高尾が盛大な溜息を吐いて、あ〜残念。などと呟く声を背中に感じながら部室のドアを開けた。