No title

練習後、誰も居なくなった部室で着替えをしていると、いつもの如く高尾が擦り寄ってきた。

「真ちゃーん、なぁ……ここ、今誰もいないんだけど?」

「知っている。だからどうした」

着替えていた手を止め、眼鏡を押上げる。どうせまた馬鹿な事を言い出すに違いない。

「誰もいない部屋でスる事つったら、一つしかねぇだろ?」

するりと身体を寄せて、甘えるような猫なで声を出す。

「全く。馬鹿な事言っていないで帰るぞ」

「え、なんでだよ」

「くだらないからだ」

「くだらなくねぇよ。恋人同士のスキンシップは大事じゃん」

なおも食い下がってくる相手に、思わず溜息が洩れた。

「高尾。お前の頭にはソレしかないのか。馬鹿め」

「ん〜、だって俺、健全なヤりたい盛りの男子高校生だし?」

真ちゃんだって本当はシたいんだろう? と、訊ねられ眉間のシワがさらに深くなる。

「俺とお前を一緒にするな! 出来が違うのだよ」

「えっ? マジで? ちょっ、淡白すぎるだろ」

「お前はガッツキ過ぎだ! 馬鹿め」

ぶーたれた高尾は、俺について歩きながら「ヤりたい、ヤりたい」とブツブツ文句を繰り返す。

「おいっ」

もう少し、オブラートに包むことは出来ないのかコイツは!

「だってさ〜、毎日会って毎日一緒にいるのに何もなしとか有り得ないっしょ」

「オレは別にプラトニックでも構わないのだよ」

「俺はそれじゃ嫌なんだって! 大体さぁ、真ちゃんだって嫌いじゃないんだろう? 気持ちいいこと」

くいっと服を引かれ上目遣いで見つめられてドキリとした。

「欲求不満とか、ならねぇの?」

「ならん!」

高尾は目を丸くして、信じられないものを見るような目つきで俺を見る。

「マジで!? で、でも家で一人エッチくらいすんだろ?」

「……ノーコメントだ」

「ぶはっ! 何それっ、ソコはしないって言わねぇんだ」

「……っ」

失言だった。高尾の顔がニヤけ顔に変わり、思わず背けた俺の顔を覗き込もうと見上げてくる。


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