No title
『そうなのか? お前は何をしていたのだ?』
「俺? 俺は真ちゃんのコト考えてた……」
『何!?』
「真ちゃん、今……何してるのかなって……声が、聴きたくなって……っ」
携帯を肩で挟み、耳を押し当てながら空いている手で胸の飾りを摘む。ぐりぐりと押したり潰したりしていると、だんだん彼に触れられているような錯覚を覚えた。
「……ふ、ぅん……ぁっ」
鼻から抜けるような甘い声が洩れて、受話器の向こうで息を呑む音が響く。
『高尾。一人なのか?』
「当たり前……だろ?」
『今、お前は何をしているのだ?』
その質問にドキリとした。心臓がバクバクと早鐘を打ち身体が熱くなる。
「……っ」
『……高尾』
低い熱を孕んだ声が名前を呼ぶ。その声に煽られて一気に射精感が高まる。
「な、なに? 真ちゃん……つか、もっかい呼んで……俺の、名前」
はぁはぁと甘い吐息を洩らし腰が揺れた。動かす手の動きはさらに加速して快感が一気に高みへと駆け上がってゆく。
『高尾、お前……何をやって……』
「ぁ……ぁっ、やべ……イキそ……っ」
『――おいっ!』
「……っ、はぁ、はぁっ……ゴメン、真ちゃん。真ちゃんの事考えてたらムラムラしちゃって真ちゃんの声オカズにしちゃった。もう電話切ってもいいぜ」
一人スッキリとした高尾は満面の笑顔。
『――このっバカ尾がっ! もう二度と電話してくるな!』
汚れた右手をティッシュで拭いながら、怒り心頭の真ちゃんに苦笑する高尾だった。