No title

「……なぁ真ちゃん」

「なんだ?」

「俺のこと、好き?」

「ブハッ! なっ、なっ、なにをいきなりっ」

飯を食いながら訊ねたら、真ちゃんが盛大に吹き出した。

「あははははっ! 汚ねぇっ。なんでソコで噴くかな」

「……ちょっと来いっ!」

指をさして笑ったのがまずかったのか、いきなり腕を掴まれて教室から引きずり出されてしまった。

そのまま人気の無い廊下まで引っ張り込まれる。

「なんだよ〜ちょっと聞いてみただけじゃん」

「お前はTPOという言葉を覚えた方がいいのだよ。クラスメイトが大勢いる中であ、あんなことを聞くなんて、どうかしている」

「ごめん……わかってた。けど、どうしても今……聞きたかったんだ」

真ちゃんは口を閉ざした。怖いくらいに真剣な眼差しで俺の顔をジッと見据える。

真ちゃんの顔を見ているとグッと胸が苦しくなった。

泣かないように慎重に、唇を笑みの形に歪めてわざと明るく振舞う。

「真ちゃん、全然言ってくんないからさ、愛のカクニンってヤツ?」

「何故疑問形なのだよ。全く、そんなもの確認せずとも毎日一緒に居ればわかるだろう」

ため息混じりにそう言って、軽く頭を小突かれた。

そりゃわかるよ。わかる、けどさ……。

「――言葉にしてくれなきゃ、不安になる時だってあるんだぜ……」

ぼそりと洩れた呟きは、再び教室に向かって歩き出した真ちゃんの耳には届いていない。

「何をしている。行くぞ」

「へいへーい」

早く来いとばかりに振り向いた真ちゃんは、なんだかんだで俺が隣に来るのを待ってくれている。

この先二人がどうなるかなんてわかんねぇけど、今はまだ真ちゃんの隣は俺の特等席ってことでいい、よな。


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