No title

真ちゃんが携帯を触る時間が増えた。明らかにそう感じるようになったのは、それから一週間くらい経ってからのこと。

休み時間が終わると携帯を取り出し、メールのチェック。

部活が始まる前と、終わった後も同様だ。

今も折角の昼休みだというのに、俺の話を聞きながら視線は携帯を見つめている。

「なぁ真ちゃん、最近、俺の妹ちゃんと随分仲良くなったみたいだけど、楽しいのか?」

「あぁ、彼女は有益な情報を教えてくれるから、とても楽しいのだよ」

「有益な情報? 何それ?」

うちの妹ちゃん、真ちゃんが食いつくような情報なんて持ってんのか?

確かに時々おは朝占い見てるけど、そこまで真剣に見てるってほどでもねぇし。

つか、見逃してる時のが多い。

聞いてみたけど、真ちゃんは答えない。

おは朝以外で真ちゃんが食いつく情報って一体なんだ?

気になって、メールを見せてくれって頼んでも、ダメだ。の一点張り。

「なんだよ、気になるじゃん。教えろよ〜。つーか、俺に隠し事とかありえなくね?」

「五月蝿い。少し黙っているのだよ」

メールを打とうとしている真ちゃんの背中に腕を回し、身体を摺り寄せて甘えようとしたら、冷たく一蹴されてしまった。

マジ有り得ねぇんだけど! 俺よりメールのが大事とかどんだけ!?

しかも、その相手が自分の妹だとわかっているから、俺の心中はますます複雑だ。

もしこのまま、二人が仲良くなって真ちゃんが俺より妹の方を選んだら……どうする?

嫌な事を想像し、ごくりと息を呑んだ。

真ちゃんと妹ちゃんが二人で楽しそうに微笑み合っている姿――リアルに想像できてしまう。

全身から血の気が引いていくような気がした。手が震えて、唇が乾く。

真ちゃんは誰にも渡したくない。渡したくないけど……もしも、本当に妹が真ちゃんを好きだと言ったら、俺は兄貴として応援してやるべきじゃないのか?

「……っ」

真ちゃんの隣は、俺だけの場所なのに……。

どうしよう、マジで。

言いようのない不安で胸が押し潰されてしまいそうだ。息が苦しくて無意識のうちに胸を押さえていた。

「高尾? 顔色が悪いのだよ。どうかしたのか?」

「えっ? あ、ははっ。なんでもねぇよ。つか、昼飯! 真ちゃん早く昼飯食わねぇと休み時間終わっちまうぜ」

真ちゃんに何か悟られてしまう前に、俺は慌てて視線を逸した。食欲なんて全然無かったけれど、無理やり喉の奥に押し込んで、出来るだけ平静を装う。

真ちゃんには余計な心配を掛けたくない。


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